| まったく、CDショップの「ラトルズ」の括りに行くと何枚CDが置いてあることか…。オリジナル・アルバムはもとより、ロン、ダーク等のソロ、ラトルズのインタビューCD(これはオフィシャルなものなのだろうか)、そして各種のカバー・アルバム、トリビュート・アルバム。
『バロック・ラトルズ』やら『ギター・プレイ・ラトルズ』『カラオケ・ラトルズ赤盤・青盤』やら各種ご用意してある。時にはオリジナル・アルバムより数が多いんじゃないかと思うくらいだ。
まあ、LP時代はもっとすごくて、『霧の5Dラトルズ』(ピクチャーで、特殊仕様のジャケを組み立てるとバナナの形になるのがウリだった)やら『アーリー・ラトルズ1952』(アーリー過ぎ。ロンが合唱コンクールに出場した時のもの)やら、『プラチナ・ラトルズ』(単にラジオ出演時のおしゃべりを集めただけ。帯に「スティッグの声が聴ける!??」と書かれていたが、あれはADの声だというのが現在の定説)やら、怪しげなものが堂々と売られていた。
中にはひどいトリビュートものあったなあ。現在は廃盤になっているが、ラトルズがCD化され始めたときに束乏ENIがどさくさに出した日本人アーティストによるトリビュート・アルバム『抱きしめた!』なんてかなりひどい代物だった。特に伊能金次の『グッタイム・トゥ・ロール』なんて、今思いだしただけで…、後は語るまい。
で、各種あるトリビュート・アルバムの中でもお薦めなのが、この『ラトルズ・ハイウェイ・リヴィジッティド』。ラトルズ現役当時のライバル・バンド、ローリング・ストーンズの『ゼア・サタニック・マジェスティーズ・リクエスト』を模したアルバムジャケからして、ヒネリが利いていていかしている。
さて、このアルバム、オルタナ系レーベルの代表格だったシミー・ディスクから出たもの。ミュージシャンにしてシミーの設立者、そして新旧オルタナ系ミュージックのフィクサー的存在だったクレイマー氏のプロデュースによる本盤、当然オルタナ系ミュージシャンで固められている。音は、当然かなり壊れていて、ありがちなラトルズ・カバー集よりかは遙かに楽しめます。途中、ラトルズの傑作パロディー・バンド=ビートルズの楽曲やアレンジも挿入されていたりして、なかなか倒錯気味でいいっす。
とは言うものの、はっきり言ってオルタナ系は全然皆目全く知らないので、クレジットされたミュージシャンで知ってるのはギャラクシー500、少年ナイフくらいだったりします。すいません。
[1]は例のストリングスからスタート。結構安心な出だし。最後の「タタンタ・タンタンタン」という締めの有名なピアノは省略されている。
[2]はなかなか可愛い女の子ボーカルによるにカバー。ヨ・ラ・テンゴと交流があったり、少年ナイフのトリビュート・アルバムに参加してたりしますが、何人?日本人?
結構まんまなコピーだけど、私のお気に入りの一つです。
[4]はロンのパートを美しい女性ボーカルが気だるげに静かに歌い、ダークのパートはばりばりノイジー、フィード・バック全開に転調するという、このアルバムならではのアレンジ。
[5]はあくまでオーソドックス且つ軽やか且つ朗らかなアレンジなのですが、数秒間ずつ各所で壊れるようです(笑)。最後に「ナンバー9、ナンバー9…」と繰り返すところがあるが、これはラトルズの『アーキオロジー』での「ウイ・アー・アライヴ!」で、ロンが「ナンバー2、ナンバー2…」と呟いているのを模したものと思われる。このアルバムのリリース時には『アーキオロジー』はまだ世に出ていなかったわけで、このDogbowlなる人物、そうとうラトルズの海賊盤なども聴き込んでいた方なのでしょう。
静かな[7]は男女二人によるボーカル。アコースティック・ギターのみの演奏で、元歌のメロの良さを改めて思い知らされる。[10][15][18]なども同様に割りと真っ当なアレンジだが、やはりラトルズの場合、楽曲の完成度が元々この上なく高いので、十分楽しめる。
[8]は今度「ゲゲゲの鬼太郎」がアニメ化されたときはエンディングにでも使いなさい、という感じの出来。
[11]は元祖オルタナの一つ、初期ピンク・フロイドの「スケアクロウ」風アレンジにひたすら脱力ボーカルが乗るというもの。ほんと、脱力過ぎて脱力する気力すら途中から失せる凄さ。先に触れたラトルズのパロディー・バンド=ビートルズの「ヘイ・ジュード」のコーラスを超いい加減に歌ったりしていて笑える。何故かベテラン・男性・ボーカル風の[12]もビートルズの「フール・オン・ザ・ヒル」のオカリナを引用している。彼らの倒錯も相当なものだ。
[12]の錯綜具合もかなりのものだ。60年代のディラン風ボーカルに、混沌としてるのか単にいい加減なのかも不明なバッキング。メロも単なるディランであり、「あれ…、元歌が思い出せない」と悩んでしまうほど変わり果てた姿。
そして少年ナイフの[16]。すご過ぎ。故カート・コバーンを始め、海外オルタナ・ミュージシャン達を唸らせ、トリビュート・アルバムまで出ている彼女たちは半端じゃない。大体、歌詞覚えてるのか?
ギタリストもちゃんとアレンジ考えてきたか? ドラマーもちゃんと曲覚えているのか? と疑ってしまうが、それら全て魅力に転じさせてしまうのは生まれ持った何かなのか。コンソールの前に座ったクレイマーも受けまくっていたに違いない。
[17]のJellyfish KissはたまにCD屋でJellyfishの区切りに置いてあったりする。ちゃんとしてよ>HMV。ここではかなり真っ当な、ギター・オルタナ・サウンド。
最終曲[20]Bongwaterはクレイマー自身のバンド。確かに気合いの入った演奏、アレンジである。「展覧会の絵」で始まるオープニングでまず笑わしてくれる。あとは複雑に絡むロウ・ファイ且つかなり高度目な演奏が延々たおやかに続く。
と、長々書いてきましたが、ラトルズのオリジナル・アルバムを聴いたあとはついついこういったトリビュートものなどに手を出しがちだが、逆にパロディー・バンドであるビートルズなどを先に聴く方が、個人的にはお薦めかもしれません。(うらわ) |