Album Review "T"#2
アルバム・レビュー"T"その2



Tommy Evans with Rod Roach
"Over You (The Final Tracks)"
Produced by Rod Roach ('93)

1. Waited Too Long
2.Love Inside You
3.I Don't Know Why
4.You And I
5.Baby You
6.If I Needed Someone
7.A Step To Heaven
8.The Rain
9.Lay Down
10.Stolen Love
11.Over You

関連項目
Badfinger "Magic Christian Music"

Badfinger "Say No More"

最初にもう書いておこうと思うのだけど、このアルバム、結構いいです。隠れた好盤というやつですね。

このアルバムを初めて目撃したのは、HMVかどこかだと思うのだけど、完全に海賊版だと思いました。モノトーンなジャケ、ぼんやりピントのずれた写真。一番上には"11 ORIGINAL NEVER BEFORE RELEASED SONGS"、その下に一応タイトルらしきものが書いてあるけど、それよりも全然目立つように、"from the former Badfinger"とやけに強調されて書いてある。海賊盤にありがちなやり方である。それに、Tommy Evansというのは当然あのトム・エヴァンスのことだろうけど、with Rod Roachのロッド・ローチって誰?

まあ、ジャケ的にはすべての証拠が「これは海賊盤である」と語っているかのようで、「HMVともあろうものが海賊盤を置くとはどういう了見なのだろう? 間違えて流れてきちゃったのかな?」と不思議に思ったものだ。
ところがしばらくすると、他の大手CDショップでも見かけるようになった。ということはやっぱりこれは正規盤?なのだろうね、と認識を変えたが、買うとなると…ちょっとこのダサ過ぎるジャケが気になった。それにジャケから想像されるのは「いかにもデモ然」とした遺稿集的なものだし…。妙にてれてれジャムったり、笑い声が入っちゃったりして、楽しげのような、なんか哀しげのような、みたいな。

と、勝手に色々想像して、いつも気にはしてはいたが買わなかったこのCD、いつのまにやら店頭から姿を消した。「あれ、そういえばこの頃見ないな」と気づいてみたら、あらゆるところからもう姿を消している。で、無いとなると欲しくなるのが人の性というもので、その後中古屋とかでも気にしていたのだが、この手の品って「確信的なファン」しか買わないから、流れてこないのだよね、中古市場に。

結局、どこのCD屋で見つけたのかは忘れてしまったが、かなりうれしかったのだけは覚えている。値段も「普通の中古CD」程度だったと思うのだけど、僕にとってはレア盤なので、何となくこっそり買った。

ライナーによると、ロッド・ローチとトム・エヴァンスが初めて出会ったのは79年。最初、コマーシャル・ソングやいわゆるジングルを二人でレコーディングしていたらしい。それから83年まで断続的に行われたコラポレーションが本アルバムの元音源ということらしい。
途中、80年にはトムはジョーイ・モーランドとフロリダで合流し、再々結成バッドフィンガーとして『セイ・ノー・モア』を録音しているが、なる程この時トムとロッドの共作曲"Crocadillo"が収められている(この曲、なんとワインのCMソングとして書かれたものらしい)。ロッド・ローチもレコーディングに短期間加わったようだが、「自分のロック/ブルース・ルーツはバッドフィンガーのイメージと相反したので、数週間で引き返した」と語っている。
トム・エヴァンスは83年に自殺してしまったわけだが、4トラックで録音された「デモ集」はロッド・ローチが保管していたが、その中の数曲が別ルートでブートレグとして流出したのがきっかけで、ちゃんとした機材でミックスをし直し、音を追加して出されたのが本作。

一曲目、"Waitd Too Long"でまず印象的なのは音のクリアさと、トム・エヴァンスの清々しい歌声。この人は、あの眉毛かなり濃いめのごっつい顔からは想像できないようなハイ・トーンな澄んだ声の持ち主なのだよな。ここでもそれは完全に健在。とにかくほれぼれしてしまうきれいな歌声。

ソング・ライターのしてのトム・エヴァンスはアイヴィーズ、初期バッドフィンガーで一つのピークを迎え、後期バッドフィンガーでは何となく影の薄い存在だったが、ピートの死後の仕事は大ホーム・ランこそないものの、かなりいいものが多いのではないだろうか。『ガラスの恋人』なんか割りと僕は好きな曲が多い。『セイ・ノー・モア』はどうにもジョーイ色が強いアルバムだが、この『オーバー・ユー』に収められた曲達も好作ばかりである。やはりこの人は独特のセンスを持ったメロディー・メイカーなのだな、と再認識させられた。趣味が良くて可愛いメロを書く。

音のクリアーさについては先にも触れたが、とにかく自宅4トラで録音されたものとは思えない。ここまで仕上げたロッド・ローチの仕事には敬意を表したい。例えばピート・ハムの"7 PARK AVENUE"のようなばらばら「かき集められたマテリアル」といったような印象はなく、ちゃんとしたトータリティーを持ったアルバムとして仕上がっている。まあ、それ自体(手を加えまくってあること自体)賛否別れるところかもしれないが、僕は支持したい。少なくともトムが意図した音とかけ離れたものにはなっていないと思うのですよ。

あと、どの曲も「なんとなく録ったデモ」ではなく、はっきりと「発表するためのデモ」だと思うのですよ。本録音を目指した気合いの入ったデモ。あくまで前向きな。
それが、どうしてあんなことになってしまったのか、僕には分かりませんが…。

最後にまた書いてしまうけど、やはり、ジャケがね…。"from the former Badfinger"という言葉はいらなかったと思う。でっかく"Tommy Evans"で十分だ。昔の名前など使う必要などない、素晴らしいアルバムなのだから。

(うらわ)

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Tom Petty
"Full Moon Fever"
Produced by Jeff Lynne & Tom Petty ('89)

1,2,4,7,11&12 Written by Jeff Lynne
/Tom Petty
3 by Mike Campbell/Tom Petty
5 by Mike Campbell/Jeff Lynne
/Tom Petty
6 by Gene Clark
8,9&10 by Tom Petty

1.Free Fallin'
2.I Won't Back Down
3.Love Is A Long Road
4.A Face In The Crowd
5.Runnin' Down A Dream
6.Feel A Whole Lot Better
7.Yer So Bad
8.Depending On You
9.The Apartment Song
10.Alright For
Now
11.A Mind With A Heart Of Its Own
12.Zombie Zoo

関連項目
Jeff Lynne "Armchair Theatre"

89年の作品。トム・ぺティのソロ・デビュー作。ウィルベリーズの結成のきっかけになった作品。
ジェフ・リンが演奏・プロデュースで全面的に協力しており、ハート・ブレーカーズの作品よりずっと趣味的、60年代的な作品となっています。ただし、[6]のカバーに象徴されているように、ビートルズというよりバーズ的です。いいんだよねえ。このカバー。
僕は基本的にアメリカンなものは苦手なのですが、このアルバムの乾いた透明感には、アメリカの砂漠もまた良し、と思うわけですよ。1などの、繊細かつ醒めた歌声は本当、素晴らしい。

ここではジョージが[2]のコーラスとリズムギターで参加しています。ちなみにこの曲のビデオクリップにもジョージが参加しているのですが、一緒にリンゴ!が映っているんですな、これが。何故おまえがいるんだ、演奏にも参加していないのに。ニクイぜ、この暇人が。

また、このアルバム、ロイ・オービソンもコーラスで参加。そして、オービソンの跡を受けてウィルベリーズに参加するはずだったデル・シャノンも、「A面が終わったんでB面に行きます」というナレーションのところでチラッと参加しています。(うらわ)


(この文章は"Super Beatle '91's Issue"に掲載されたものを加筆修正したものです)
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Full Moon Fever
"Full Moon Fever" [FROM US]

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Tom Petty & Heartbreakers
"Into The Great Wide Open"
Produced by Jeff Lynne & Tom Petty ('91)
Tom Petty
2,4,8&10 by Tom Petty
6&11 by Mike Campbell/Jeff Lynne
/Tom Petty

1.Learning To Fly
2.Kings Highway
3.Into The Great Wide Open
4.Two Gunslingers
5.The Dark Of The Sun
6.All Or Nothin'
7.All The Wrong Reasons
8.Too Good To Be True
9.Out In The Cold
10.You And I Will Meet Again
11.Makin' Some Noise
12.Built To Last

91年発表のハートブレーカーズ名義の作品。前作『フル・ムーン・フィーバー』同様、素晴らしい作品です。路線は前作のままだが、完成度はより高く、またバンド名義ということで、サウンド的にはより骨太な印象。捨て曲一切なし。プロデュースはやはりジェフ・リン。演奏にも参加しています。
クレジットを見ると"Thanks to God,...(etc),the entire wilbury family"とあるだけで、ジョージら他のウィルベリーズのメンバーは参加していないようです。

ただ、[2]のコーラスが非常にジョージっぽく聞こえるのですが、みなさんいかかでしょうか?そう聞こえるというだけで特に証拠はありませんが。(うらわ)


(この文章は"Super Beatle '91's Issue"に掲載されたものを加筆修正したものです)
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