Album Review "N#2"
アルバム・レビュー"N"その2



Nilsson
"Harry"
Produced by Rick Jarrard /Harry Nilsson
('69)
All Songs except 4,5,6,11&13 Written by Harry Nilsson
4 by John Lennon /Paul McCarteny
5&6 by Bill Martin
11 by Harry Nilsson /Bill Martin
13 by Randy Newman

1.The Puppy Song
(子犬の歌)
2.Nobody Cares About the Railroads Anymore
(忘れられた鉄道)
3.Open Your Window
(窓をあけよう)
4.Mother Nature's Son
5.Fairfax Rag
6.City Life
(都会の生活)
7.Mournin' Glory Story
8.Maybe
9.Marchin' Down Broadway
(ブロードウェイの行進)
10.I Guess the Lord Must Be in New York City
(孤独のニューヨーク)
11.Rainmaker
12.Mr. Bojangles
13.Simon Smith and the Amazing Dancing Bear
(サイモン・スミスと踊る熊)

邦題『ハリー・ニルソンの肖像』。

この世で一番可愛い曲は何か? まあ、結論から申し上げますと、このアルバム一曲目、"Puppy Song"であると考えて間違いないでしょう。
「『エンジェル・ハート』を越える、映画史上かつてない度肝を抜くラスト・シーン!!」で話題になった「ユー・ガット・メール」で初めてこの曲を聴きました。一回しか観てないのでうろ覚えですが、映画の冒頭、カメラが住宅地の通りを写し出し、ゆっくりとメグ・ライアンの家の中まで進んでいく間、この曲が使われていました。
基本的に私は映画のエンド・ロールはあまり見ないというか、見てもいい加減なのですが、「あの冒頭の超素敵な超可愛い歌を歌っていたのは誰っ!?」ということで、この時ばかりは食い入るように見ました。で、「あ、そうなんだ、ニルソンなんだ、え、ニルソンなんだ、へぇ、ニルソンなんだ、びっくりしたなあ、ニルソンなんだ」と僕の中のニルソンへの関心は急上昇。
ちなみに[10]も「ユー・ガット・メール」の中で使われているようですが、どこで使われたのかまるで記憶にありません。(これまたスタンダート然とした名曲なのですが)

ともかく繰り返しますが、[1]は可愛い。もともとメアリー・ホプキンの為に書き下ろされた曲で、やはり69年発売のポール・プロデュース作『ポスト・カード』で聴くことが出来ます。ノスタルジックなアレンジは基本的に同じ路線を狙って録音されたものですが、なぜか可愛い子ちゃんが歌っているものより、やや獅子鼻の男が歌っているバージョンの方がより可愛い。なぜでしょう。なぜなんですか? やっぱ歌のうまさの差なのですか? それとも真の可愛さを獲得するには多少の髭の濃さも必要なのですか?

ともかく、アルバム全体ニルソンの声の良さ、歌のうまさに酔いしれてしまう。発語の快感、一人多重コーラスの快感を随所で聴かせてくれます。
まあ、ここら辺の歌のうまさが彼のキャリアを微妙にややこしいものにしてしまった部分はあるような。シンガーの部分とソング・ライターの部分が作品上ではうまいこと結合不可分されているのですが、セールス上はなぜかバランスが悪かった。有名な話として、映画「真夜中のカウ・ボーイ」用にニルソンは[10]を用意したのですが、実際にはフレッド・ニール作の「噂の男」をニルソンが歌ったものが採用されている。で、大ヒットしてしまったわけで、まあ選択に誤りはなかったわけですが、ニルソンのキャリアにはどうもこの手の話が多い。他人の曲をカバーすると大ヒット、自分の曲を人に提供したら大ヒット、でも自作自演曲のヒットは意外と少ない。妙なものです。

[4]ではビートルズ曲をカバー。基本的にオリジナルに忠実なアレンジ、歌い回しだが、ここでも歌声の繊細が際だっている。敢えて不満を言えばこれを聴くと"Everybody Got Something To Hide Except My Monkey"をどうしても聴きたくなることくらいか。

もう一曲ボーカル的な名演を挙げれば[7]。ホームレスの女性の物語を歌ったものですが、この曲を聴くといつも"She's Leaving Home"を連想してしまう。どちらも哀しさをことさら煽っているわけでもなく、どちらかというと淡々、冷静な曲調なのだけど、限りなく哀しい、みたいな。

[11]はバンド・スタイルで妙にポップな仕上がり。かなりビートリーな曲調でアルバムの中では浮いているが、全ニルソン曲の中でも僕のフェイバリットの一つです。雰囲気としてはマジカルとホワイトの中間という感じ。この曲におけるニルソンはポールというよりジョン的。モンキーズ脱退前のマイク・ネスミスがギターを弾いていたりします。ちなみに彼は71年のソロ、『ネヴァダ・ファイター』でこの曲を取り上げていますが、物語ソングであることを強調したようなかなり芝居じみたアレンジで、全く違う印象の曲になっている。この一曲を聴いただけでも、まあこの人にはモンキーズは無理だわな、という感じ。

[13]は次作『ニルソン/ランディ・ニューマンを歌う』で全曲カバーすることになるランディー・ニューマンの曲。67年にアラン・プライスやハーパーズ・ビザールが既に取り上げているが、やはり彼のバージョンが、考えてみると結構えぐい歌詞を可愛く、それでいてえぐさの香りを完全に奪いさることもなく、うまく歌い上げている。ほんと、この頃のニルソンというのはある種恐くなるくらい、センス、バランスの良さが底知れない。

(うらわ)

Amazon.co.jp アソシエイト
ハリー・ニルソンの肖像
"ハリー・ニルソンの肖像"

AmazonHarry Nilssonを検索
This Item may be ... On Third Round



Nilsson
"Pussy Cats"
Produced by John Lennon
('74)
1 Written by Jimm Criff
2 by Bob Dylan
3,4,5&9 by Harry Nisson
6 by D.Pomus/Mshuman)
7 by John Lennon/Harry Nilsson
8 by Ted Vann
9 Loop De Loop
10 J.DeKnaight/M.Freedman

1,Many Rivers To Cross
(
遥かなる河)
2.Subterranean Homesick Blues
3.Don't Forget Me
(
僕を忘れないで)
4.All My Life
5.Old Forgotten Soldier
(
忘れられた老兵)
6.Save Last Dance For Me
(ラストダンスは私に)
7.Mucho Mungo/Mt. Etelga
8.Loop De Loop
9.Black Sails
(
月光に黒い帆)
10.Rock Around The Clock

ニルソンの74年のアルバム。ジャケットはナメネコ風のニルソンとジョンがコラージュされていますが、ナメネコって死んだ猫使っているって噂、当時ありましたよね。
実際にはそんな事はなかったようですが、かわいいと思ってみていたいた写真が突然不気味に見えたのを覚えています。このアルバムも、ジャケットのかわいい雰囲気と中身はだいぶ違いますね。ある意味では不気味かも。

わざわざジャケットに顔を出すくらいだから、ジョンの役割は単なるプロデュースを越えている様です。[1]からして、『マインド・ゲームス』を思わせるようなサウンド。いかしている。正直、『マインド・ゲームス』よりこっちの方が気に入りました。
参加ミュージシャンもリンゴ、ジム・ケルトナー、クラウス・ヴーアマンなどジョンの舎弟達が参加している。

いわゆる「失われた週末」に製作されたアルバムだし、カバー集という事で、ジョンの『ロックン・ロール』と兄弟アルバムといえるのでしょうが、『ロックン・ロール』が結構エンターテイメントかつカチッとした作りになっているのに比べ、苦悩丸出し。むしろ感触としては『心の壁、愛の橋』に近い。
ボーカルの荒れ具合は正統的ニルソン・ファンには評判悪い様ですが、この声が僕にはこのアルバムの価値を決定付けるものに聞こえます。怠惰さの表れには思えない。
しかし、その後ジョンはヨーコとよりを戻し、子育てなんかに励むのに対して、ニルソンはいよいよ深みにはまって戦前の純文学者風に破滅していくのですから、可哀想な話しではある。

[2]は混沌とした音でディランのカバー。ディランのカバーって大抵はずれがないけど、やはり元歌がいいのでしょうか。
[1][3][6][9]の様にストリングスを効果的に使ったうねりのある音が印象的。ニルソンの声と一体となって、一種癖になるようなネットリ感を出している。

ところでジャケットの話に戻るけど、発売当時、「過激だ」と話題になり、CDでリイシューされた際も海外盤では違うイラストに差しかえられたりもしているのですが、どこが過激なんでしょうか。死んだ猫でも使っているのか? (うらわ)

Amazon.co.jp アソシエイト
Pussy Cats
"Pussy Cats"

AmazonHarry Nilssonを検索
This Item may be ... On Third Round



Noguchi Goro
"Goro In Rock"

Produced by 中村準良 ('73)
1 Written by Carly Saimon
2 by Stevie Wonder
3 by Linda & Poal MacCartony
4 by Lennon & MacCartony
5 by The Osmonds
6 by Elton John
(訳詞 1〜3 杉山正美、4〜6 大日方俊子)
7&10 by 大日方俊子/佐藤寛
8,11&12 by
千家和也/馬飼野俊一
9 by
杉山政美/馬飼野俊一

1.You're So Vain
(うつろな愛)
2.Superstition
(迷信)
3.HI-HI-HI
4.Oh Darling
5.Crazy Horse
6.Crocodile Rock

7.可愛いいあの子
(That Pretty Girl)
8.1
君よ泣かないで
(You Never Cry)
9.
好きなんです
(My Favorite)
10.
ふたりの秘密
(A Secret For Us)
11.
何処か遠く
(Far Away)
12.
霧の少女
(Maiden In The Mist)

僕は「ゴレンジャー」の中ではミドレンジャーを応援してしまうような子供だったので、当然「御三家」の中では野口五郎を応援していました(その性格が後にジョージのソロ・アルバムを集めるような嗜好性へと発展したのかも)。何回か出演を逃した後の「紅白」復帰時も、客席の横断幕「おかえり!五郎!野口五郎FC」を見るにつけ、「ほんと、お帰りなさい…、五郎」と胸をきゅんとさせていたような気もする。
「カックラキン大放送」も当然、西城秀樹のシリーズよりも、郷ひろみのシリーズよりも、野口五郎のシリーズの方がお気に入りだった。これは今思いだしても、彼のコントの間の取り方が一番面白かったような気がする。

まあ、そんな子供時代も終わり、今や野口五郎がどうなろうと基本的には知ったこっちゃないと思って生活してるが、先日友人のO君から凄い報告を受けた。なんと、野口五郎がアルバムで、「ハイ・ハイ・ハイ」をカバーしているというのだ。しかも「オー! ダーリン」も演ってるというのだ。しかも日本語で !!
これは聴かなければ !!

で、銀座ハンターでLPが100円で売られているのを発見。題して『GORO IN ROCK / 野口五郎ロックの世界』である。

これはA面は当時の欧米のヒット曲を五郎がカバー。B面はオリジナル曲という、トッド・ラングレン『フェイスフル』ライクな構成になっています(笑)。

細かい選曲までは聞かされていなかったが、すごいなあ。一曲目からカーリー・サイモン「うつろな愛」だもんなあ。基本的にあのベースから入るアレンジだが、なんか違うぞ〜、既に(笑)。なんか舶来の歌に聞こえない。結構ソウルフル且つ力強い原曲に比べ、泣きの五郎節がいきなり全開だ。

[2]の例のシンセ・ベースのリフをギターで代用してるのだが、弾いてるミュージシャン、てめえ、絶対日本人だろ! しかも譜面もらってとりあえず弾いてるだけだろ! って、本当はどうだか知らないけど、いかにも当時のスタジオ・ミュージシャン的な演奏でファンキーさのかけらもないです。
そして、五郎のノリにもここら辺で少し心配になる、[1]同様淡々とした歌い回しなのである。おい、五郎、この曲はさすがにもっと熱く歌うべきではないか? なのに、なんだその余裕あり過ぎなゆったりしたボーカルは。もしかしてこの企画自体に乗り気じゃないのか?

外野の心配をよそに、いよいよ問題の「ハイ・ハイ・ハイ」に突入。似てるようで全然違うギターのイントロが気持ち悪いなあ(笑)。
そして、五郎の歌い出しは、「♪ん〜、悪っ魔がいっきなりこのむっねに飛び込んだ〜」で始まる。 (^^;) (^^;) (^^;) 「♪それが、ハ〜イ、ハ〜イ、ハ〜イ、お前だっよ」と言われても…。
(^^;) ……。まあ、こういうのを期待して買ったんですけどね。五郎は相変わらずマイ・ペースで歌い続ける。「テンション」とか「勢い」、「気合い」とは無縁の世界である。冒頭の歌詞察しがつくとおり、原詞とはなんら違う歌世界が展開していきます。これはまあ、杉山正美さんが精魂込めて作った歌詞なわけですが…。確かに直訳しちゃって、「オレのバナナを云々」とするのも問題ありますしねえ。

続く、「オー! ダーリン」は基本的に彼が得意とする泣き節、捨てないでソングなわけで、「♪オ〜、ダ〜リン、眠れぇは、しぃないよ、とても」なわけで、一応曲と彼の歌世界に接点があるような気はする。まあ、荒っぽさはやはり全くなく、ひたすら哀願する男という感じですが。いかにも歌謡曲女性コーラス隊もそれなりにはまってる?かも。

さて、続く[5]だけは妙に演奏が気合い入っていて、結構ロックっぽいです。まあ、原曲のクレイジーさは、やはりないですが(これも冷静な五郎のボーカルのせい?)。
[6]は、こんなもんでいいんじゃないですか?取りあえず、という感じの出来。でも、この歌さえも、五郎に歌われるとかなり哀しい振られ男の歌になっちゃうんだよなあ。


追記その1。どうせビートルズ系をカバーするなら同じ泣き節系のジョージをカバーすればはまったのになあ、などと思う。73年なら"Try Some Buy Some"辺りいかがだろうか。時期は違うけど、五郎がカバーする「ギターは泣いている」なんてのも、すごく聴きたい〜。


追記その2。上のクレジット・曲名は基本的にアルバムに記載されていたとおりに書いたのだが、"Carly Saimon"ではなく、"Carly Simon"の気がしてならない。あと、"Poal MacCartony"ではなく、"Paul McCartney"の気がしてならない。あと、細かいが、"HI-HI-HI"ではなく、"Hi.Hi.Hi"の気がしてならない(大文字小文字はともかく、「-」が気になる)。"Oh Darling"も"Oh! Darling"な気がしてならない。"Crazy Horse"も"Crazy Horses"な気がしてならない。


追記その3。ちなみにB面の曲を聴いたら、「あんたやっぱりオリジナル曲歌ってた方が100倍いいよ〜」と感じました。やはり五郎用に用意された曲の方が、キー的にも曲調的にも合っていて、本人も全然生き生き歌っているような気がする。


追記その5。このアルバムが出た73年、彼は『GORO ON STAGE 2 / 野口五郎故郷に帰る』というライヴ・アルバムを出しているが、そこでは「クライジー・ラヴ」や山田耕筰の「赤トンボ」などを取り上げたりしている。そんなことと考え合わせてみると、このアルバムの「海外ヒット曲を日本語で歌う」という企画は、平尾昌章が50年代に築いた路線を70年代的に展開しようとしたのかもしれない。


追記その6。最近正式にGOROと改名した彼だが、アルバム・タイトル等ではデビュー間もない72年からGOROの表記を使用しています。(うらわ)
Amazon.co.jp アソシエイト
Amazonで野口五郎を検索
This Item may be ... Almost Out Of The Track


←BACK ABC順に戻る

ABC順に進む NEXT→


フロント・ページへアルバム・レビュー・インデックスへガラクタ箱入り口へ何らかの足跡(掲示板)ご意見・ご感想をください!