| 注)この文章はある方への私信という形で書かれたものです。
拝啓
はじめまして。このページを始めまして、内容的な反響はほとんど無く、奥様を通じての、「『メイヤー・オブ・シンプルトン』はこの世にある曲ベスト1」という感想(?)が一番励まされました。自分と音楽的趣味を多少なりとも共有する人が、このページを見てくれてるんだ、と。
その後、チープ・トリックやら何やら色々回り道をしまくっています。すいません。しかし、久しぶりにお勧めできるアルバムです。
マーティン・ニューウェルという人は、元々は80年代にクリーナーズ・フロム・ヴィーナスというバンドをやっていた人で、現在は主に詩人として活動しているそうです。
これは94年のソロ・アルバム。1曲目いきなりビートルズ的なギターとベース・フレーズが飛び出します。そしてジャケットを見れば分かる通り、死神博士みたいなルックスをしてるくせに、まるで少年のような甘酸っぱい歌声。
このアルバムのプロデューサーは実はアンディー・パートリッジ。ただし、プロデュースにとどまらず、ほぼ全曲でなんとドラム(!)を叩いています。元々お父さんがジャズ・ミュージシャンという事もあって、子供の頃に少し叩いていたそうですが、決してうまくはない。しかし、ヘタウマというやつですね、それが味になっていて、60年代のオールド・テイストを一層ひきたてています。感触としてはポールが叩くドラム近いかも。
製作当時、マーティン・ニューウェルもアンディー・パートリッジも奥さんと別れたばっかりで、二人で小屋にこもり、しみじみ人生について語り合いながらこのアルバムを作ったそうです。故にこのアルバムは、マーティン・ニューエルの作品というより、マーティン&アンディーという色彩が強いようです。『プッシー・キャット』がニルソン&ジョンであるのと同様に。
ここでのアンディーは(こう呼ぶとTBSのアナウンサーみたいですね)60年代の音楽で得られる快感を余さず再現しようとしているかのようです。XTCでは屈折した形で出てくる嗜好性が、ここではそのまんま、全開しています。まるで、「どうだ、僕はその気になればビートルズと全く同じサウンドが作れるんだぞ」と言いたげです。
その様は、トッドが『ディフェイス・ザ・ミュージック』や、『フェイスフル』で「一度好きなだけやってみたかったんだよねえ」と、愛するサウンドをそのまま再現するのに全力投球してしまったのを思い出させます。変名バンドでさえ見せなかったそのまんま振りです。
しかし、そんな60年代桃源郷サウンドを実現させたマーティン・ニューエルのスイートな歌声とメロディー・メイカー振りもすごい。君には「イギリスのやしきたかじん」という称号を与えよう。
どれも素晴らしい曲ですが、敢えてベストを選ぶとしたら、表題曲の[4]でしょうか。この曲は(ちょっと無粋なほど)ビートルズにしか音楽は聴かない僕の友人をして、「気持ちいいー!」と言わしめた曲です。
ところで、ここまで書いてきて気づいたのは、98%くらいの確率で、貴殿はこのアルバムをすでに聴いているかもしれませんね。まあ、それはそれとして、今度機会があれば、お勧めのアルバムなどを教えてください。
それでは、馴れ馴れしくもこんな文章を書いた事をお許しください。
(うらわ) |