Album Review "M"#1
アルバム・レビュー"M"その1



Martin Newell
"The Greatest Living English Man"
Produced by Andy Partridge ('94)
All Songs Written by Martin Newell

1,Goodbye Dreaming Fiealds
2.Before The Hurricane
3.We'll Build A House
4.The Greatest Living Englishman
5.She Rings The Changes
6.Home Counties Boy
7.A Street Called Prospect
8.Christmas In Suburbia
9.Straight To You Boy
10.The Jangling Man
11.The Green-Gold Girl Of The Summer
12.An Englishman's Home
13.Elizabeth Of Mayhem
14.Why My Ship Comes In

関連項目
Xtc "Oranges & Lemons"

注)この文章はある方への私信という形で書かれたものです。

拝啓
はじめまして。このページを始めまして、内容的な反響はほとんど無く、奥様を通じての、「『メイヤー・オブ・シンプルトン』はこの世にある曲ベスト1」という感想(?)が一番励まされました。自分と音楽的趣味を多少なりとも共有する人が、このページを見てくれてるんだ、と。
その後、チープ・トリックやら何やら色々回り道をしまくっています。すいません。しかし、久しぶりにお勧めできるアルバムです。

マーティン・ニューウェルという人は、元々は80年代にクリーナーズ・フロム・ヴィーナスというバンドをやっていた人で、現在は主に詩人として活動しているそうです。
これは94年のソロ・アルバム。1曲目いきなりビートルズ的なギターとベース・フレーズが飛び出します。そしてジャケットを見れば分かる通り、死神博士みたいなルックスをしてるくせに、まるで少年のような甘酸っぱい歌声。

このアルバムのプロデューサーは実はアンディー・パートリッジ。ただし、プロデュースにとどまらず、ほぼ全曲でなんとドラム(!)を叩いています。元々お父さんがジャズ・ミュージシャンという事もあって、子供の頃に少し叩いていたそうですが、決してうまくはない。しかし、ヘタウマというやつですね、それが味になっていて、60年代のオールド・テイストを一層ひきたてています。感触としてはポールが叩くドラム近いかも。

製作当時、マーティン・ニューウェルもアンディー・パートリッジも奥さんと別れたばっかりで、二人で小屋にこもり、しみじみ人生について語り合いながらこのアルバムを作ったそうです。故にこのアルバムは、マーティン・ニューエルの作品というより、マーティン&アンディーという色彩が強いようです。『プッシー・キャット』がニルソン&ジョンであるのと同様に。
ここでのアンディーは(こう呼ぶとTBSのアナウンサーみたいですね)60年代の音楽で得られる快感を余さず再現しようとしているかのようです。XTCでは屈折した形で出てくる嗜好性が、ここではそのまんま、全開しています。まるで、「どうだ、僕はその気になればビートルズと全く同じサウンドが作れるんだぞ」と言いたげです。
その様は、トッドが『ディフェイス・ザ・ミュージック』や、『フェイスフル』で「一度好きなだけやってみたかったんだよねえ」と、愛するサウンドをそのまま再現するのに全力投球してしまったのを思い出させます。変名バンドでさえ見せなかったそのまんま振りです。

しかし、そんな60年代桃源郷サウンドを実現させたマーティン・ニューエルのスイートな歌声とメロディー・メイカー振りもすごい。君には「イギリスのやしきたかじん」という称号を与えよう。

どれも素晴らしい曲ですが、敢えてベストを選ぶとしたら、表題曲の[4]でしょうか。この曲は(ちょっと無粋なほど)ビートルズにしか音楽は聴かない僕の友人をして、「気持ちいいー!」と言わしめた曲です。

ところで、ここまで書いてきて気づいたのは、98%くらいの確率で、貴殿はこのアルバムをすでに聴いているかもしれませんね。まあ、それはそれとして、今度機会があれば、お勧めのアルバムなどを教えてください。
それでは、馴れ馴れしくもこんな文章を書いた事をお許しください。
(うらわ)

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Matthew Sweet
"Girlfriend"
Produced by Matthew Sweet ('91)
All Songs Written by Matthew Sweet

1.Divine Intervention
2.I've Been Waiting
3.Girlfriend
4.Looking at the Sun
5.Winona
6.Evangeline
7.Day for Night
8.Thought I Knew You
9.You Don't Love Me
10.I Wanted to Tell You
11.Don't Go
12.Your Sweet Voice
13.Does She Talk?
14.Holy War
15.Nothing Lasts

〜 #1 ジャケの人はマシュー・スイートではありません 〜
マシュー・スイートが騒がれ出した91年頃、何度かこのアルバムは手にした。「なかなか可愛い人だな。マシュー・スイート」と思っていたのですが、この人は全然マシュー・スイートではありません。実際にはこんな野郎です。全然マシューちゃんぽくもスイートちゃんぽくもありません。

〜 #2 沈まないアルバム 〜
このアルバム、当時かなりの評判を呼んだものの、「パワーポップ」の分類に属していて、結局手を出さなかった。が、十年以上経った今も音楽系の個人ページなどをネットサーフィンしていると、このアルバムをフェイバリットに挙げている方が結構いる。
当時一括りになっていたパワーポップ勢が軒並み行方不明になり、さらにそのアルバムもほとんど語られることがなくなったことと考え合わせてみるに、どうやらこのアルバムは特別なようだ。随分遅くなったが聴いてみることにした。

〜 #3 こりゃ凄え。ところでこの音はなんだっけ 〜
一聴、こりゃ凄えと。こりゃ独特なアルバムだなと。ビートルズ系なメロディーもいい。メロディーもいいけど、なによりこの独特なサウンド。ざっくりとした質感。その音には多少の思い当たるところはあったのですが。
このラフな感じの音はデモテープの音。このラフで抜けのいいギターやドラムのスネアは練習スタジオの音。練習スタジオで妙にいい音出している人っているでしょ。あの感じをそのままアルバムに持ち込んでいる。普通は未完成品とされる音の持つ生々しさかっこよさをそのまま真空パック。出来そうで出来ない芸当であり(通常、単に未完成品になる)、マシュー・スイートがプロデューサーとして注目されたことも頷ける。
でも、さらに連想は飛ぶ。「こういう音のアルバム、他にも聴いたことあったけか」。あった。全然違うのだけど、ほんと全然違うのだが、ポールの『マッカートニー』。

〜 #4 木の葉が沈み石が浮く『マッカートニー』 〜
『マッカートニー』というのはかなりとんでもねえアルバムである。要は自宅で録ったデモをそのまま出してしまったものだ。と書いてしまうと本当にとんでもねえ感じになってしまうが、考えてみるとこの時期自宅で原始的とはいえ一人多重録音できる設備をもったミュージシャンが何人いたのだろうか。69年のことである、ほとんど皆無だったのではないだろうか。多分、自宅で(それも一人で)全楽器セット録音しちゃおうなんていう発想自体なかっただろう。トッド・ラングレンあたりにはその行為自体がかなりの衝撃だったのでは。
かくて『マッカートニー』は一人宅録野郎達の先駆けになったわけだが、そういう技術的なことをさておいて、音自体、非常に変わった味わい持ったアルバムである。
ポール自身がどんなに『マッカートニー』の意義を強調しても、私自身は「なーんかしょーもない音」と思っていた。ところが、90年代以降、徐々にその認識を新たにせざる得なくなってきた。『マッカートニー』をフェイバリットに挙げるミュージシャンが増えてきた。それは主にインディーズ系の人達だが、確かに彼らに言われると説得力がある。所謂ビートルズ・ストーリー(『マッカートニー』はビートルズ解散後に最初にリリースされたソロアルバム。その発売自体が解散宣言となった)から全く自由に、しかもロウファイやグランジを通過した後に『マッカートニー』に向き合ったとき、それは独特で豊かな音世界を持っていると認めざるを得ない。そして認めざる得ないことはポールファンとしては喜びでもある。

〜 #5 『マッカートニー』フォロワーどもといえば 〜
『マッカートニー』は(驚いたことに)色々な要素魅力を持ったアルバムなのでその影響の受け方も色々だけど、その「ラフな感じ」を明らかに模している人達もいる。例えばレニー・クラヴィッツの1st、2ndの何曲か。ジョンの影響ばかり言われる人だけど、実は随所で『マッカートニー』ぽさが顔を出していると思う。

〜 #6 で、やっとマシュー・スイートの話に戻るが 〜
で、このマシュー・スイート。この「ラフなかっこよさ」もやはり『マッカートニー』あたりから影響を受けていると思うのですよ。実際にはこのアルバムは一人で録ったわけではないのですが、その密室的な雰囲気、「ラフに見せかけといて、実は一音一音にまで(例えばカウントやコーラスのタイミングのずれまで)作為がある」感じも似ている。勿論本能のまま実験的に作ってしまったポールと違い、かなり意識的に手練手管を弄してそれを実現している。完成度は言うまでもなく段違い。
しかも単なるオタクであるはずのマシュー・スイートが作ったこのオタクな発想の音が、はるかそんな小さな村を越えた射程距離を持つ、こんなにも説得力ある音を作ってしまった事実。びっくりだっちゃ
(うらわ)

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Mcguinness Flint
"The Capitol Years"
Produced by Glyn Johns ('96)
All Songs except 2,3,6,12,26
Written by Benny Gallagher/Graham Lyle
2,26 by Hughie Flint/Dennis Coulson
/Tom McGuiness
3 by Benny Gallagher/Graham Lyle
6 by Tom McGuiness/Dennis Coulson
12 by Tom McGuiness/Kelly
15 Tom McGuiness/Hughie Flint

1.When I'm Dead And Gone
2.Lazy Afternoon
3.Bodang Buck
4.Mister Mister
5.Heartage
6.I'm Letting You Know
7.Let It Ride
8.Dream Darling" Dream
9.Who You Got To Love
10.International
11.Malt And Barley Blues
12.Rock On
13.Happy Birthday Ruthy Baby
14.Conversation
15.When I'm Alone With You
16.Fixer
17.Faith And Gravy
18.Klondike
19.Reader To Writer
20.Changes
21.Friends Of Mine
22.Piper Of Dreams
23.Jimmy's Song
24.Sparrow
25.Wham Bam
26.Back On The Road Again

関連項目:
Gallagher And Lyle "Breakaway"

マッギネス・フリント、70年のファースト"McGuinness Flint"([1]〜[10])と、71年のセカンド"Happy Birthday,Ruthy Baby"([13]〜[24])の2in1CD。(ただし1st"Brother Psyke"は未収)

これはビートルズの系譜のかなり辺縁に属する代物です。プロデューサーはグリン・ジョンズ。(ビートルズ最後期のエンジニア。ゲットバック・セッションなどに参加)
あと、ファーストにはボンゾズやラトルズのニール・イニスも参加しているらしい。

メンバーは、元マンフレッド・マンのトム・マッギネス、ヒューイ・フリント、デニス・クールソン、ベニー・ギャラガー、グレアム・ライル。
ベニー・ギャラガーとグレアム・ライルは元々ソング・ライター・コンビとして活動していて、ポールに認められアップルと契約もしていた。(メリー・ホプキンに"Heritage"などを提供)

結成当時、トム・マッギネスとヒューイ・フリントの念頭にあったバンド名はビートルズとザ・バンドだったらしく、上のグリン・ジョンズ、ニール・イニス、アップル所属のソング・ライター・コンビという人選も、それを実現するために意識的に選ばれたようだ。実際、彼らの音を表現するのに、「ビートルズとザ・バンドの中間」というのはかなりいい線いっているんではないでしょうか。

ファースト・シングルの[1]は全英2位の大ヒット。アルバムの方も売れて、プレスには「新しいビートルズ」と騒がれたらしい。目論見通りのはずが、急激な成功のプレッシャーで潰れちゃった、とライナーでトムが申しております。実際、ビートルズの名前を持ち出されて耐えきったバンドってあまりいないかも。オアシスぐらいか。でも、オアシスだって後世に同情の目で見られないようになるには、これからが正念場か。

2ndにはニッキー・ホプキンス(ジム・ケルトナーと並ぶ、EXビートルズ御用達ミュージシャン)が参加していて、やはりいいピアノが聴ける。僕は「アーシー」という表現がつくものはわりと苦手だが、ブルース臭が希薄なせいかすぐ馴染んだ。ていうか、かなりお買い得なアルバムじゃないでしょうか。これだけ楽しませてもらって一枚分の値段なのだから。地味だけど、かなりお勧めです。(うらわ)

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Michael McGear
"Woman"
Produced by Michael McGear ('72)
1,4,5,8&10 Written by Michael McGear
2,3,6,7&11 by Michael McGear/Roger McGough
9 by Michael McGear
/Paul McCartney/Roger McGough

1.Woman
2.Witness
3.Jolly Good Show
4.Roamin' Road
5.Sister
6.Wishin
7.Young Man
8.Edward Health
9.Bored As Butterscotch
10.Uptowndowntown
11.Tiger

関連項目:
Mike McCartney "McGear"

Scaffold "The Scaffold at Abbey Road..."

言わずと知れた、ポールの弟。マイク・マクギアという通称の方が一般的でしょうが、このアルバムではマイケル名義ですね。

ポールの全面プロデュースの『マクギア』の方はかなり前からCD化されていたので、手にした人は多いのでは。
かく言う僕も、池袋WAVEの“Beatles”のコーナーに、ヨーコ等とともにおいてあるのを見るたびに、「何だかなー」と思ってました。
「ドサクサだよなあ」とか「宝くじ当たったら買おう」とか。

しかし、マイクがもともとスキャッフォルドというバンドというかユニットをやっていて、全英No.1も獲ったことがある事実を後で知りました。
意外と実力派なんだ、マイク。ごめんね、ドサクサだとか宝くじだとか思ったりして。

そして、これは72年のファースト・ソロ・アルバム。後にグリムスを結成するズート・マネー、アンディ・ロバーツ、デイヴ・リチャーズ等々、友達関係を総動員して作ってます。兄貴と違って友達多い。リンゴ方式と言えましょう。
この人自身は大して楽器は弾けないようですが、音楽のセンスというか、趣味はすごくいい。
適度にビートルズ・ライクな淡いメロディで、アレンジも上品、ミックスも好き。スキャッフォルドみたいな冗談ソングやポエトリー・リーディングはなく、全編佳曲。お買い得だね、こりゃ、奥さん。

一般に言われてるほどポールっぽさは感じないなあ。むしろ[11]の冒頭はジョンぽくて笑える。(そしてドンチャン騒ぎで終わる)

ちなみに、ジャケットの女性は、あの有名なマザー・メアリーだそうです。(うらわ)


追記:[9]はマイクとポールの共作だそうだ。そう言われてみればポールっぽい叙情的な曲に聞こえてくるから不思議だ。僕の耳もいい加減なもんである。
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"Woman" [FROM US]

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