| リンダのアルバム。ヨーコの作品でさえちょっと困ってしまうのに、リンダまでとは。
元々は追悼アルバムとして作られたわけではなくて、96年にリンダがファンからもらった、『シーサイド・ウーマン』[8]以外の作品は無いの?という手紙から、今までの作品をまとめたものを出そうという構想が生まれたそうだ。
その後、闘病中も作業が続いた。ポールによると「なにかポジッティブな事をする必要があった」とのこと。通院中の車の中で歌詞を書いた曲もあるという。リンダ亡き後行われたミキシングにはジェフ・エメリックが参加している。
72年に録音された[8]から、98年に録音された[5][6][16]まで幅広い年代から収録されている。多くはリンダの作詞作曲だが、[3][5][6][12][13][15][16]にはポールも名を連ねている。
はっきり言ってほとんどの作品は「よくこんなもの世に出すよなあ」というもの。やっぱりこの人は基本的に音痴なのである。
しかし、それは致し方ないことだ。悪いのは全てポールである。本人だって自分の音楽的才能は十分承知だったろうし、つらい目にも相当あったんではないでしょうか。
それでもこの夫婦の面白いところは、ポールもポールで嫌な顔をするカミさんを諭して、しつこくしつこく引っ張り出すし、リンダはリンダで最終的にはポールの意向に従って表舞台に出てくるところだ。
ジョン&ヨーコが「芸術的同胞」みたいな側面があるのに比べ、ポール&リンダの基本は「ポールはリンダが大好き!」であろう。実際、リンダのボーカルに足を引っ張られている作品もある。(『ラム』の何曲かとか)
いくらポールだってマイナス面は気づいていたろう。
でも、雑誌でワースト・ボーカリストに選ばれようと、ウイングスで他のメンバーのいじめに合おうと、ポールはリンダを横に置きつづけたのである。そしてついにはこんなアルバムを堂々と出してしまったのである。
アーティストとしてはどうかと思うが、人間としては一本筋が通っている。ここら辺、人間ポール・マッカートーニーに興味があるかどうかで180度評価は変わると思う。
さて、作品の方だが、さっき書いたように、聴いている途中に瞳孔が開いてしまうものが多い。近所のおばちゃんのカラオケをヘッドホンで聴いたらこんな感じだろうか。
しかし、そんな中、リンダが旅立つ一月ほど前にポールと二人きりで録音された[16]だけが、本当に美しい。アパルーサとは馬のことなんだけど、最期のとき、ポールはリンダに「君は今アパルーサに揺られているんだよ」と語りかけたという。
ポールとリンダとも長い付き合いだなあと感じる人は、この一曲を聴くためだけにも、このアルバムを手に入れてもいいんでは。(うらわ) |