Album Review "J"#3
アルバム・レビュー"J"その3



John Lennon
"Wonsaponatime"
Produced by John Lennon, Yoko Ono
& Jack Douglas/John Lennon,
Yoko Ono & Phil Spector/Yoko Ono
/John Lennon/John Lennon & Yoko Ono/Richard Perry/George Martin ('98)
All Songs except 6,7,11,12,13,18
Written by John Lennon
6 Trad
7 by John Lennon/Yoko Ono
11 by HermanHupfeld
12 by T.Davis/G.Vincent

1.I'm Losing You
2.Working Class Hero
(
労働階級の英雄)
3.God
(
)
4.How Do You Sleep?
5.Imagine (Take 1)
6.Baby Please Don't Go
7.Oh My Love
8.God Save Oz
9.I Found Out
(
悟り)
10.Woman Is The Nigger Of The World
(
女は世界の奴隷か)
11."A Kiss Is just A Kiss"
12.Be Bop A Lula
13.Rip It Up/Ready Teddy
14.What You Want
15.Nobody Loves You When You're Down And Out
(
愛の不毛)
16.I Don't Wana Face It
17.Real Love
18.Only You
19.Grow Old With Me
20.Sean's"In The Sky"
21.Serve Yourself

ビートルズ・クラブがまだシネクラブと名乗っていた頃、『ロスト・レノン・テープ』をカセットで売っていた。6巻セットのやつを当時勢いで買ったが、買ったことで満足して、大して聴かなかった。ここら辺は完全に個人の好み、価値観なのだが、ああいうブートみたいな発掘ものというのはあまり好きではない。
同じラジオ・シリーズだったら渋谷陽一のやっていたジョンのインタビューものの方がよほど聴いた。結局、ストーリーがあるか無いかの差なのではないのでしょうか。

そんな流れもあって、例のジョンの4枚組ボックスには手を出していない。どっかの雑誌で「値段を高くしてハードルを高くしたのは正解」と書いていたが、本当、そう思う。僕みたいな中途半端な人間は排除されている。ちゃんと「ストーリーを埋められるくらい」、ジョンに思い入れのある人間だけが聴くべきものだろう。

その点、こちらのライト盤は僕でも聴ける万人向けの作品だ。実際、こんなに良いとは思わなかった。美味しいとこどりだ。音質もほんと、いいね。

[1]は、ギターにリック・ニールセン、ベースにトム・ピーターソン、ドラムはバーニー・カルロス。ジョン・レノン WITH チープ・トリックが実現。ていうかチープ・トリック WITH ジョン・レノンというくらい、リック・ニールセンがバリバリに気合入ったギターを聴かせてくれます。オリジナルよりこっちの方が明らかにかっこいいと思うんだけど。

[5][6]は『イマジン』のセッションがら。[5]はニッキー・ホプキンスのオルガンがフューチャーされていて、やや甘い感じだが、ジョンのボーカルも含めて素晴らしい。
[6]がスタジオ録音されていたというのは、僕ははじめて知ったが、ねっとりとしたボーカルが生々しくてかっこいい。

[8]はあんまり好きでなかったが、今回のクリアな音で聞いたらなんか中毒になったみたい。仕事に疲れて帰りの電車で聴いていると、ジョンと一緒にやけくそに大声で歌いたくなる。
[13]は"Ready Teddy"が長いバージョンで、ジョンが途中で疲れちゃってて笑える。確かに長すぎるかも。

[18]も前は余りいいと思わなかったけど、こうして聴くと、もしちゃんと発表していたら『スタンド・バイ・ミー』みたいに代表曲の一つになっていたかも、なんて思う。生命保険のCMとかで使われそう。(そういったジョンのイメージの流用って個人的には腹立たしいんだけど)

[19]はジョージ・マーティンのストリングス・アレンジということで期待して聴いたが、これは少し肩透かし。歌とストリングスが分離してしまっている。『ミルク・アンド・ハニー』に入っていたシンプルなバージョンの方がやはりいいと思う。

ただ、ディラン批判の[21]でいきなり終わるというのはちょっと違和感あったんだけど、甘すぎるアルバムにならないように、意識的にこうされたのでしょうか。ところで、子供の頃のショーンの声って本当に可愛いね。(うらわ)

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Wonsaponatime
"Wonsaponatime" [FROM US]

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Julian Lennon
"Valotte"
Produced by Phil Ramone
('84)
All Songs written except 1,2&9 by Julian Lennon
1 by Clayton/Lennon/Morales
2 by Clayton/Lennon/Luggeri/Morales
9 by Burton

1.Valotte
2.O.K. For You
3.On the Phone
4.Space
(空間)
5.Well I Don't Know
(教えてよ)
6.Too Late for Goodbyes
7.Lonely
8.Say You're Wrong
(偽りの涙)
9.Jesse
10.Let Me Be

僕はジョン・レノンが殺害されたときは小学生で、まあ正直、何のことやら分からなかった。それよりかは同じ年に起きた「ポール・マッカートニー、入国時大麻所持で逮捕」のニュースの方がずっと強い印象が残っている。なんだかテレビで大騒ぎをしていて、黒い長いコートにポールの刺繍をしたファン達(当時のアイドル親衛隊風だった)が泣き崩れる映像とか、それを見て父や母が、「あの人はどうもたっくさん持って来ちゃってたらしいね」と話していたことを覚えている。当時は外人アーティストだけでなく、日本人のタレントの薬関係の逮捕も比較的多かったような気がする。で、「なんかいい加減な外人のタレントがまたマヤクで捕まっちゃったんだな」くらいの感じでみていた。

ジョン殺害のニュースはブルーバックの背景にジョンのモノクロ写真が映し出され、「殺害されたジョン・レノンさん(40)」という感じの映像だけが記憶に残っている。姉が「これは大変なことなのだよ、この人はすごい人なんだよ」と横で強調してたような気もする。

ジュリアン・レノンがデビューした84年にはある程度音楽を聴くようになっていたが、ビートルズ自体にはまだあまり興味が無くて、「ベスト・ヒット・USA」で「ヴァロッテ」が流れたときも「いい曲だな」とは思ったけど、隣で驚喜していた姉とは大分温度差があったな。一々「ここのところが似てるよ〜」と指摘していたような。

思えばその驚喜ぶりも当たり前で、ジョンが亡くなったのが80年。翌年は当然ジョン関係ビートルズ関係の大リバイバルが起こる。そして、そういったものもあるが程度収まって、本当のファンには「ジョンの不在」が身に染みだしたであろう84年初頭、『ミルク・アンド・ハニー』がリリースされる。
ジョン周辺が再び盛り上がったその年の終わり頃、かねてから噂になっていたこのアルバムがリリースされたのだ。
しかも、声くりそつ。音楽的にもまるで『ダブル・ファンタジー』『ミルク・アンド・ハニー』の続編のような出来。こりゃ、盛り上がらないはずがない。「再来か!!??」みたいな。盛り上がりついでに来日公演も複数回見にいった友人を僕は知っている。たしか、「スタンド・バイ・ミー」「デイ・トリッパー」も披露していて、あの声で唄われた日には、みんな感謝感激雨あられだったのだろう(←古い表現だ)。

さて、本アルバムのレコーディングは84年に入ってからなので、ジュリアンにも、プロデューサーのフィル・ラモーンの頭には『ダブル・ファンタジー』『ミルク・アンド・ハニー』の音の感触が残っていたと思われる。
とくに『ミルク・アンド・ハニー』の音を発展させたらこうなるだろうな、と僕には響く。
ジョンというのは意外とバランスの人というか、鼻の利く人で、80年代のミュージック・シーンで生き延びるための音楽スタイルを結構貪欲に模索していたと思うのだ。「作家性」や「ヘヴィネス」をソフトでクリーンな音の衣で包んで聴かせるような。このアルバムの音はそれをそのまま継承している。どちらかというと都会的なツルッとしたモダン・ポップ。メロやフックの作り方も親父さんによく似ている。
CDの帯には「ジュリアン・レノン…現在22才/今、大きな原石がまばゆい光を放ち始めた」とあるが、原石もなにも、音楽的にはもう完全に完成されているのである。これ以上…、何を望むというのか。

「後継者」としてジュリアンはとんでもない、ジャストなタイミングでデビューしたわけだが、裏返せば、一番最悪なタイミングだったとも言えるのかも。
大きな声では言えないが、ジョンが生き延びていたら、80年代以降の彼というのはかなりきつかったのではないかと思うのだ。先に書いたように、彼は既にミュージック・シーン生き残りための手は色々考えていたとは思うのだが、それを上回って、音楽的に、というか世間の評価的に、相当苦戦を強いられたのではと想像するのだ。ソロになってからの彼は元々チャート的には派手派手しくはなかったが、例えばポールが味わったミュージック・シーンとの乖離、逆風はどうしたって同じように受けたと思うのだ。

ある意味、その「逆風」を身代わりとして受けたのがジュリアンなんだと思う。そしてその逆風には「所詮七光り」「所詮焼き直し」という声も加味され、一方彼自身にも音楽的アイデンティティーの迷い・疑念というのも当然生じただろうし…。まあ、これだけ倒錯的な音楽的キャリアを歩まざる得なかった人も珍しい。

『ヘルプ・ユアセルフ』辺りに見られるひどい葛藤・戦いはそれなりに人に感銘を与えるし、『フォトグラフ・スマイル』で一段階深い作家性とアイデンティティーを獲得した彼だけれど、それでもやはり音楽的に最も優れた作品は未だこのアルバムだし、フランスの田舎町ヴァロッテで書かれた表題曲は最高作の一つだろう。そこら辺にも、この人の業の深さを感じる。

(うらわ)

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Julian Lennon
"Photograph Smile"
Produced by Julian Lennon/Bob Rose ('98)
All Song except 1,2,5,6,7,10,11,12,14,15 &16 Written by Julian Lennon
1,2,5,9&11 by J.Lennon/M.Spiro
6,7,10&15 by J.Lennon/G.Darling
14 by J.Lennon/L del Bello
16 by Gerry Beckey

1.Day After Day
2.Cold MP3
3.I Should Have Known
4.How Many Times
5.I Don't Wanna Know
6.Crucified
7.Walls
8.Believe
9.Good to be Lonely
10.Kiss beyond the Catcher
11.And She Cries
12.Photograph Smile
13.Faithful
14.Way to your Heart

Bonus Tracks
15.Don't Let Me Down
16.I Need You

お願い:以下、結構おセンチな文章なので、その手ものが苦手な人は読まないで下さい。

このページの趣旨から考えると、ジュリアン・レノンなんてのはいの一番に取り上げても良さそうなものですが、今日まで来てしまいました。この人に関しては結構難しい…。何だか純粋に音楽を楽しむ前に色々考え込んでしまうのですよね。この人の進むべき音楽性とか、置かれた立場とか。僕が考えても仕方ないのですが。

このアルバムを聴きながらふと思い出したヨーコの言葉。大体こんな感じだったと思う。「ジョンはポール・マッカートニーに出会わなかったら多分世にも出ず、酒場で酔いつぶれながらすごい詩を一人書いたりしていたのではないか」
これを聞いたときはなるほどと思いました。確かにそうかもしれない。

そこから連想して勝手にこんなことも考える。「もしビートルズが解散した時ジョンがヨーコと出会ってなかったら、ジョンのソロ・キャリアはどうなっていたのだろうか?」
『ダブル・ファンタジー』は当たり前として、『ジョンの魂』や『心の壁、愛の橋』のようなアルバムも生まれなかったのではないでしょうか。

ポールに出会わなかったジョン、ヨーコに出会わなかったジョン、想像しただけでなんだか頼りなげで心細げな様子が思い浮かぶ。ジョンという人は「あなたはすごい」と断言してくれる大きな存在がそばにいて初めて、確信に満ちた詩を書き、音楽を創り、稀代の皮肉屋にもカリスマになれたような気がする。

このアルバムは決して駄作ではないし(傑作と言っていいのかもしれない)、ジョンという存在と結びつけすぎて考えるべきではないのだろうけど、ふと頭をよぎった「ポールにもヨーコにも出会わなかった人の創ったアルバム」というイメージが頭から離れなくなった。

初期のジュリアン・レノンは、声が抗いがたく父親に似ていただけでなく、はっきりしたフックを持った曲を書くという意味でも『ダブル・ファンタジー』期の父親の資質に近いものを感じた。明快にキャッチーなフックはリチャード・マークスあたりを連想しなくもありませんでしたが(笑)。

このアルバムの前作『ヘルプ・ユアセルフ』ではヒュー・パジャム風打ち込み仕立ての曲があったり、同時に「ソルトウォーター」や「ヘルプ・ユアセルフ」あたりでは父親譲りのメロディーを聴かせたりもしていた。つまりは「非ジョン的」なものと「ジョン的」なものが混在した、ある種分裂的なアルバムだった。本人も自分はどんな方向の音楽に進むべきか迷っていたと思うのですよ。
そして、ファンも迷っていたのだと思うのですよ。彼にどれだけジョン的なものを求めるべきなのかどうなのか。創り手も聴き手も一種倒錯的な気持ちを持ったまま、彼のキャリアも「なんだかな」という感じで停滞しきっていた。(その倒錯はこのアルバムをもってしても終わっていたないと思うし、彼が音楽活動を続ける限り続くと思う)

そこら辺、父親の影からほとんど自由に見えるショーン・レノンとは大きな違いだと思う。これは資質の違いもあるでしょうが、やはり生前のジョンとの関係性が大きいとしか思えない。

ピアノ、ギター、ドラム、薄いストリングス・アレンジと非常に「クラッシック」なアレンジのこのアルバム、帯に「これこそ真のジュリアン・レノンのファーストアルバムだと感じる」というジュリアン自身のコメントが載っている。確かに気負ったところが全く感じられない。
無理に新しいジャンルに挑戦しようとか、「ジョン的」であろうとか、「非ジョン的」であろうとか。

このアルバムを最初に通して聴いた印象は「なんか全曲同じ感じ」。以前のように思わず口ずさんでしまうような強力なフックを持った曲が一曲もない。
どの曲もジャケットのようなくすんだ静かなトーン。決して暗くもないし、後ろ向きだとは思わない。どちらかというと(こんな言い方は照れてしまうが)何らかの決意みたいなものに満ちたアルバムだと思う。
ずっとつきあっていた女性と別れた後ということもあって、自然、別離に関する歌も多いようだが…。しかし、そんなことを抜きにして聴いても、その静かさから感じられるのは「ひどい孤独」。

やはり彼が辿ったキャリアが色濃く反映されているようにも思う。はっきり言って彼は力強さを感じさせるタイプの人間ではない。ピアノに独り静かに向かっている男。ある種の達観と決意をもって。しかし同時に「ポールにもヨーコにも出会わなかったジョン」のイメージが何となくでは僕にはだぶってに見える。淡々とした曲をゆっくりつむぎだすことで、二人の像は緩く重なり、そして離れれいいく。一段階倒錯は決着がついた。でも、恐らくそれは完全に終わることがない。

ただ、こんなことを書いてきてなんだが、ジュリアン自身の記したライナーを読むと、意外と本人は屈託がない。たとえば[5]は意図的にビートルズっぽい曲を書いたとのこと(そう?)。そしてオリジナルの最終曲[14]は父親に捧げた曲。「ルーシー・イン・ザ・スカイ」っぽいアレンジや歌詞が途中聴ける。しかし、これは明らかに「ジョンっぽい」というより「ジョンに捧げた歌」。

ちなみ上のジャケは初回限定のフォトスタンド風ボックスに入った豪華版。中には小さなフォトアルバムが入っている。
ボーナス最終曲は、なんとアメリカのファースト・アルバムからのカバー。ただ、正直言うと、アルバムの一貫性を考えると最後の2曲は要らないように思う。

静かなトーンのある種淡々とした曲の連なり。このアルバムだけでなく、延々とこういうアルバムを発表していていってもらいたい。きついだろうけど。「僕はジョンのアルバムよりジュリアンのアルバムの方が好きだよ」というファンが(たくさんではないしろ)現れるまで。

(うらわ)

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Photograph Smile
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