| シングル「ニュー・ミステイク」にデモ・トラックを加えた日本独自編集のアルバム。『ニュー・ミステイク&デモ・トラックス』という名でリリースされた。[2]〜[4]が『こぼれたミルクに泣かないで』、[5][6]は『ベリーバトン』収録曲のデモ。[7]〜[10]はデモとは言え、全くの未発表曲。この4曲を聴くためだけでも買う価値があります。
さて、ジェリーフィッシュの話だが、何からしようか。
前にも紹介したが、All Music
Guide(以下AMG)というデータ・ベース。無料で使え情報量もかなりのもので、このページでレビューを書くときなどもちょくちょく利用させてもらってる(もっとも、このページでは「情報」はたいして載せてないので、あまり必要ないのですが…。はは)。
AMGの面白いところはアーティスト情報だけでなく、「類似アーティスト」「影響を受けたアーティスト」「類似アルバム」なども紹介してくれるところ。全く知らないアーティストの名前が並んでいたりして、色々発見がある。
ただ、同時に「なんでこいつが類似なの…???」と、頭にハテナ三つという時もありますが。さっきジェリーフィッシュの項を見てみたら、「類似アーティスト」を以下の通り紹介していた。
Enuff Z'nuff, Matthew Sweet, Candy Butchers, Ringo Starr, The
Figgs, The Greenberry Woods, The Rembrandts, Sloan, Ice Cream
Hands, The Knack, The Posies, The Smithereens, Dwight Twilley,
The Cavedogs, Hoodoo Gurus
「影響を受けたアーティスト」は以下の通り。
Badfinger, Big Star, Cheap Trick, The Move, Queen, The Beach
Boys, The Beatles, Paul McCartney, Squeeze, The Raspberries
ざっと見ても、「類似」「影響」ともでたらめではないことが分かる。それもそのはず、これらはWEBを見ている人達が送った情報を反映させているのだ。全くよくできた仕組みだ。その積み上げがこの結果。WEBだから世界中の人が情報を送っているのだろうとは思うが、やはりジェリーフィッシュはアメリカのバンドだし、AMGもアメリカのページなわけで、恐らくはアメリカ人の方の「ジェリーフィッシュ観」が色濃く反映されているのだろうとは思う(まあ、熱心な日本人のファンの方の情報も折り込み済みだとは思うが)。
リンゴが「類似」に含まれているのは、アンディーとロジャーがアルバム『タイム・テイクス・タイム』に参加したせいだろう。バッドフィンガー、ムーヴ、ポール・マッカートニーはそれぞれライヴでの持ち歌であり、妥当。直接カバーはしてないが、クイーン、ビートルズというのも大きな影響を受けているのは間違いない。
ただ、「うーむ」と思うのが、マシュー・スィート、ポウジーズ、ビッグ・スターあたりの名前である。これっていわゆる「パワー・ポップ」と一時期カテゴライズされた一派であって、「うーむ」である。そういう認識だったのか…。なんとなく日本人の方が彼らの本質を分かっていたような気がしなくもない(弱気)。
ジェリーフィッシュは本質的に「時代の音」とか「ストリーム」とは無縁な存在だったと思うのです(本人達にとってそれがいいことかどうかはともかく)。たとえば[1]は弩ポップな曲ですが、これが93年という時代の刻印があったかというと、別にないように思う。確かに「過去のポップ資産」を大量に動員した曲だとは思いますが、そういう意味でなら、93年ではなく2000年でもいいと思うし、2020年に書かれたとしても不思議ではない。[2]なんか確かにハッピーヴァレー〜グランジ後の音だと思うけど、これも「同時代」としてその音を鳴らしてるのではなくて、単なる一バーツとして取り入れてるような気がする。
彼らは一種、ポップの鵺みたいなところがあって、「お、これいいな」と思うものを本物以上の品質で再現する。まあ、ある意味それだけである。ただ、その鵺ぶりがそれはそれはとんでもなかったということ。ホント、「不可能はない」って思わせる凄みがあったよな〜。次はどんなアイディアのアルバムか想像しただけでどきどきしたものだ(出なかったけど)。
さて、アルバム発表曲のデモ[2]〜[6]、既にデモの段階でほとんど曲は固まっているのが分かる。しかし改めて「すごいな〜」と思うのは、どれもよくできたデモなのだけど、正規バージョンの方が数段階洗練されているということ。レコーディングは無茶苦茶時間を掛けたそうだけど、相当しつこいバージョン・アップを重ねたのでしょうね。プロデューサーのアンディー・ガルトン(と読むのでしょうか)の貢献も大きいのかもしれない。
未発表曲[7]〜[11]はホント「こんなもんお蔵入りさせとくなよ〜。まだ他にも隠してんじゃない〜?」もんだ。
[7]はポリス風の淡々とした曲で彼らの中では異色だ。淡々としたメロディー、淡々としたアレンジ、コーラス、なのに飽きない。彼らの音の謎が深まる一曲。
[8]はロケンロール。ここら辺の曲のせいで「パワー・ポップ」のくくりが生まれたのかもしれないが、これは単なるフリーなんだって(笑)。「フリーっぽい曲作ったら、フリーよりポップになっちゃった。でもフリーよりいいかも」みたいな。本当に絶妙なアレンジ&掛け合いコーラスで私のフェイバリットの一つ。
[9]は小品という感じだが、こういう小品にも膨大な時間を掛けてたりするんだろうなあ。繊細な繊細な美しさ。
[10]は隠し球というか、これって本当にデモなのか?
「スーバー・マリオ」にインスパイアされて作ったというこの曲、私思うに、明らかに「アニメ」のサントラとして書かれていると思うのだが。もちろんこの世に存在しないアニメの(笑)。「ディズニーのサントラみたいな曲書きてえなあ」って作ったんではないでしょうか。とんでもないクオリティーで仕上げてます。
実は本人達も「ディズニーのサントラの仕事ならただでもやっちゃう!」みたいことをインタビューで言っていたし。(余談だが、アンディー・パートリッジのところには本当にディズニーから仕事が来たそうだが、あまりのギャラの安さに断ったとのこと)
同種の音として思い浮かぶのが、実際に「ルパート」の絵を付けた某ポール・マッカートニーさんの某「ウィ・オール・スタンド・トゥゲザー」だが、この仕事に関していえば、スターマー氏の仕事を参考にもう一度がんばっていただくしかないという感じ(笑)。(うらわ)
(付記)この文章を書いた大分後になって知った事実ですが、[7][9]はアンディーとロジャーが参加していたバンド=ビートニク・ビーチで発表されていた曲のセルフ・カバーです。どちらもリンゴ・スター『タイム・テイクス・タイム』用のデモとして録られたものだそうです。 |