Album Review "H"
アルバム・レビュー"H"



Heavy Jelly
"Take Me Down To The River"
('98)
All Songs Written by Jackie Lomax

1.You Better Let Me Know
2.Born For Something
3.Too Complicated
4.Just Don't Feel So Good
5.F-F-F-Females
6.Bio-Blues
7.If You'd Like Too
8.Take Me Down To The River

ヘヴィー・ジェリーはジャッキー・ロマックス在籍していた幻のバンド。

ジャッキー・ロマックス、インチキ臭い名前だ。人を名前で判断するのはどうかとも思うが、「ジャッキー」だけでも胡散臭いのに、「ロマックス」というのはいかがなものか。なんか12チャンネルで6時50分ごろやっていたアメリカ製アニメの正義の味方みたいだ。

ジャッキー・ロマックスの名はアップル・アーティストの一人として聞いたことのある人は多いだろうが、「誰なんだ?」と思っている人も多いでしょう。

元々は60年代始めからブライアン・ジョーンズらとアンダーテイカーズというバンドをやっていた。リバプールで人気があったらしいし、トップ・テン・クラブやスター・クラブにも出演していたので、この頃ビートルズとも会ってたりするかもしれない。
アンダーテイカーズ解散後はロマックス・アライアンスなるバンドでブライアン・エプスタインと契約し、エプスタインの経営するショウ会場に出たりもしてたそうだ。その後アップルが設立され、69年に『イズ・ディス・ホワット・ユー・ウォント?』がジョージのプロデュースで出されたわけだ。何だか裏ビートルズ・ストーリーのような人だね。

最初にヘヴィー・ジェリーを「幻のバンド」と書いたが、文字通りそうなんです。
68年に、「タイム・アウト」という雑誌でヘヴィー・ジェリーを絶賛する記事が掲載されたが、実はそんなバンドは存在していなかったのだ。つまりは冗談記事。でも、それに便乗して、「へヴィー・ジェリー」としてレコードを出そうとしたのが、このアルバム。ひどい話といったらいいのか、面白い話といったらいいのか。
ただ、実際にリリースはされず、69年にプロモ盤のみが流れただけだった。なぜ発売されなかったのかは定かではないが、ジャッキー・ロマックスがアップルと契約した時期と重なるので、そのせいもあるのも知れない。結局84年になってLP化され、98年にCD化された。

先の「へヴィー・ジェリー」話、まだおまけがあって、何ともう一組ヘヴィー・ジェリーを名乗るやつらがいたのだ。スキップ・ビファーティーというバンドの変名で、こいつらは68年にヘヴィー・ジェリー名義でヒット曲まで出したらしい。つまりは先を越されたわけで、お蔵入りの理由の一つはこれだっただろうか。

さて、アルバムの方だが、84年、98年にわざわざリイシュ―されているくらいだから、なかなか良い。地味だけど、僕は好きです。全曲ロマックスの書いた曲で、時にブルージーに、時にファンキーに、それでいて全体的に適度にポップ。ジョージがロマックスに非常にこだわったのは何となく分かる。突き抜けたものはないけど、何かある。そんな感じだ。

買ってから気づいたのだが(それもTさんに指摘されて初めて気づいたのだが)、[8]には何とバッドフィンガーのピートとトムがコーラスで参加している。アップルがらみで知り合ったのだろうか。
そういえば、音楽性は全然違うが、なぜかバッドフィンガーを連想しなくもない。多分、そこはかとない端正さが(あるいは抑制が)、共通しているのかな。(うらわ)

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Hotlegs
"You Didn't Like It Because You Did'nt Think of it"
('76) Produced by Eric Stewart, Kevin Godley & Lol Creme
All Songs except 2,4,10&13 Written by Kevin Godley /Lol Creme /Eric Stewart
2,4,10&13 by Kevin Godley /Lol Creme

1.Um Wah, Um Woh
2.Today
3.You Didn't Like It Because You Did'nt Think Of It
4.Fly Away
5.Run Baby Run
6.The Loser
7.Neanderthal Man

8.How Many Times
9.Desperate Dan
10.Take Me Back
11.Lady Sadie
12.All God's Children
13.Suite F.A.
(1st Movement:On My Way)
(2nd Movement:Indecision)
(3rd Movement:The Return)

ビートルズ系のミュージシャンっつたら、なんと言っても10ccはその筆頭という感じなのでしょうが、あんまり聴いてません。
と、思ったのだけど、つらつら考えると主だったアルバムは大体聴いていたりする。うーん、でもなんとなく僕の中で存在が希薄だぞ。なぜだ? キャラも結構濃い目だと思うのだけど。離合集散が激しいせいか? でもそれほど激しいメンバー・チェンジもしてないな。

こんなことではいかんっ、つーか全然OKな気もするが、10ccを改めて聴いてみることにした。
と、丁度いいタイミングでこのアルバムが見つかった。っていうか、結構中古で見かけがちなアルバムなのだが、かなり安く売っていたので買ってみました。

10ccといえば、エリック・スチュアート&グレアム・グールドマンとケヴィン・ゴドレー&ロル・クレームの2組のアーティスト・チームで構成されているという感が強いが、10ccの前身バンド=ホットレッグスの70年発表のファースト、"Think School Stinks"にはグレアム・グールドマンは参加していません。彼が名を連ねることになるのは、セカンドにあたる71年の"Songs"から。まあ、セカンドといってもこれは"Think School Stinks"の曲を一部入れ替えただけのもの。で、本アルバムは"Think School Stinks"と"Songs"を合体させたお買得盤。 (なんか10ccってこういう感じの編集盤多いですね)

クレジットなんか見ると、Creme /Godley /Stewartの共作曲がかなり入っている。これがアルバムを重ねるごとに段々きれいにGouldman /StewartとCreme /Godleyに別れてゆき、そのうち本当に分裂してしまうわけですな。

ところで、2枚のアルバムの合体作ということで、収録時間が長くてびびりました。最初46分テープに録ろうとして入りきれず失敗。「ちっ」っつーことで余裕を持って54分テープで録ってまたB面が入りきらず失敗。「ええっ!?」っということで64分テープを使ったらやっと入りました。しかしそれでも結構ぎりぎりです。こんなに収録時間の長いLPって"John Lennon Collection"以来記憶にないなあ。っていうか、今時テープに録ってる場合じゃないですか?
それはともかく、曲目を見ると、ファースト"Think School Stinks"からが[1][4][5][7][8][9][10][12][13]、残りがセカンド"Songs"からということになりましょうか(セカンドの曲目は未確認です)。

1曲目から結構激しい且つ意外と黒っぽい且つそうは言っても複雑なアレンジと変なコーラスは、やはり10ccバリバリでなかなかよろしいのではないのでしょうか。黒っぽいといえば[11]辺りも相当かっこいいですな。
真っ当なきれいなメロディーを聴かせるのは[2][4][8][10]。ここらはポール+ジョージ・マーティンの正統的嫡子という感じです。

で、やはり本作の聴き所というか、スタジオ・ミュージシャンだったホットレッグスが世に出るきっかけになった[7]。多分「平和を我等に」が元ネタになっているとは思うのですが、かなりねじれていますなあ。なんかうれしくなります。10cc時代の過剰なまでのねじれでないところがミソでしょうか。「適度にかなりな」ねじれなのですよね。

もう一つの山場は組曲である[13]で、ゴドレー&クレームはすでにこういう大作というかサントラッチックというか構築主義的美というか、そういう世界に暴走しているのは微笑ましいですな。独特なコーラスはこの曲でも既にかなり見受けられて、まあ、最初からこういう人達だったのですね。元を辿れば『アビー・ロード』なんかに影響を受けているのでしょうが、逆に『レッド・ローズ・スピード・ウェイ』に影響を与えてたりして、なんて思います。

ところで、この全然少しも全く買う気をそそらないジャケはゴドレー&クレームが描いたそうです。うーん、ジャケ的には相当欲しくない。意外なことに絵の才能はあんまりなかったのですか?

(うらわ)

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