Album Review "G" #4
アルバム・レビュー"G"その4



George Harrison
"Gone Troppo"
Produced by George Harrison & Ray Cooper ('82)
All Songs except 3 Written by George Harrison
3 by Swearingen

1.Wake up My Love
(愛に気づいて)
2.That's the Way It Goes
3.I Really Love You
4.Greece
5.Gone Troppo
6.Mystical One
7.Unknown Delight
8.Baby Don't Run Away
9.Dream Away
(オ・ラ・イ・ナ・エ)
10.Circles

"Somewhere In England"の項に続き、『Super Beatle 90's Issue』を肴にした「博士堂」でのジョージ与太話はしつこく続く。
中坊「そういえば、この店、ジョージのソロは大抵揃えてあるのに、『ゴーン・トロッポ』は置いてないですね」
なっちゃん「そう! 前に買い取りで直接もってきたお客さんがいたのに、博士が断っちゃったこともあったの!」
博士「……まね」
中坊「まあ、『ダーク・ホース』と並んで、やばいアルバムとしてファンの間では有名ですからね…」
なっちゃん「百歩譲ってやばくても、ジョージのアルバムなら間違って買っていくお客さんいるんだから、置いておけばいいの! …実はわたし、聴いたことないけど、そんなにひどいの? その本にはなんて書いてある?」


82年の作品。この年ジョージはオーストラリアに移住し、南国の庭いじりに精を出していたらしいが、このアルバムにもそんな環境の変化が反映され、トロピカルなムードが漂っている。これまでの穏やかな明るさとは異質な、ほとんどヤケクソのような明るさである。

音楽面での大幅な手法の変化はないが、ドゥ・ワップのカバー[3]や、(ほぼ)インストのみに依るナンバー[4]があったり、女性コーラスを取り入れたりと、「いつもと少し違うことをやってみよう」いう姿勢が見え隠れする。あくまで「少し違う」というところが、彼のファンからすると、何となく居心地悪いような、据わりの悪いような感覚に囚われたりもするのだが…。

前作からのレコード会社とのすれ違いは相変わらずだったらしく、ジョージはプロモーションに全く協力せず、アルバムはオリジナル・ソロ・アルバムとしては始めて100位以内にも届かなかった。
結局このアルバムの失敗でジョージは音楽活動から身を引く形になってしまう。このままマジで引退してしまうと思ったファンも多かったろう。



なっちゃん「確かにいいこと書いてない感じだけど、あんまりどう良くないのかはっきりしないわね」
博士「ん…。それなら。(一度店の奥に引っ込んで、『ゴーン・トロッポ』のCDを持ってくる)聴いてみる?」
中坊「なんだ、自分用にはちゃんと持ってるんですね」
(店内で『ゴーン・トロッポ』鑑賞会が開かれ、約30分経過。その間ぽつぽつ来た客達は難しい顔でジョージに聴き入る3人の異様な雰囲気に気圧され、5分と保たず帰っていく)
博士「…終わったな」
中坊「…終わりましたね」
なっちゃん「…うん。でも、これってそんな、ひどいアルバム…なのかな?」
博士「うーん…。どうじゃろ。それ程悪くないような気もするのじゃが」
中坊「そうですね…。まあ、世間の評価ほど悪くはないような気もするんですけど…。でも…」
なっちゃん「なんか言葉濁るの分かるかも…。なんとなく脱力感に襲われるアルバムね。どこがってこともないんだけど…」
中坊「個々に見たら、そんなに悪くない曲がそろってると思うのですけどね。『バンドットQ』の挿入歌だった『ドリーム・アウェイ』もポップですし」
博士「ああ、あの映画のエンディングに使われていて、それなりにハマッテいたしねえ。ハンドメイド・フィルムの作品としては一番評価が高い映画だろうけど、結果的にはその評価がジョージの関心を音楽から映画に向かわせたんだろうなあ」
中坊「『バンデットQ』は監督もテリー・ギリアムだし、マイケル・ペイリンやジョン・クリーズも絡んで、まさにモンティー・パイソン関係の人脈で作った映画ですよね」
博士「まあ、そのまま友達関係でもあるのだろうな。友達といえば、このアルバムのジャケットのデザインは、モンティー・パイソンとも浅からぬ関係のある元ボンゾ・ドッグ・バンドのレッグス・ラリー・スミスだよ。この人は一時期、『職業=ジョージの友達』状態だったらしいね」
なっちゃん「これ…、なんとなく気の抜けたデザインよね…。(気を取り直して)『アイ・リアリー・ラヴ・ユー』ってドゥワップなんて楽しいんじゃない? カバーみたいだけど、原曲は誰なの?」
博士「ステレオズというグループが出した61年の曲だよ。ビルボードで29位というのだから、渋好みの選曲だな。足音風の導入部も含めてほぼ完コピに近いかな」
なっちゃん「いい曲他にもあるわよ。『アンノウン・デライト』なんか『慈愛の輝き』に入ってたっておかしくないような曲じゃない」
中坊「そうですね。『ベイビー・ドント・・ラン・アウェイ』や『サークルズ』もジョージ得意の泣きのメロディーですし」
博士「…別に異論はないけど。でも、アルバム全体聴くとなんとく脱力するのは何故なんじゃ?」
中坊「…謎ですね」
なっちゃん「…本人のやる気のなさ?」

(うらわ)

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George Harrison
"Cloud Nine"
Produced by George Harrison & Jeff Lynne ('87)
All Songs except 6&11 Written by George Harrison
6 by Harrison/Lynne
11 by Clark/Harrison

1.Cloud 9
2.That's What It Takes
3.Fish on the Sand
4.Just for Today
5.This Is Love
6.When We Was Fab
(FAB)
7.Devil's Radio
8.Someplace Else
9.Wreck of the Hesperus
(金星の崩壊)
10.Breath Away from Heaven
11.Got My Mind Set on You
(セット・オン・ユー)

このページを始めたときの目標に、「取りあえず、アルバム・レビュー(みたいなもの)を100本書こう」というのを置いた。
その時はわりと軽い気持ちで「100本」と思っていたのだけど、途中色々あってなかなかそうはいきませんでしたね。もう、2年近くの時間が過ぎようとしている。

でも、そろそろ本当に100本が見えてきた。それが達成できたらしばらくアルバム・レビューの更新は休もうと思う。
そして多数の「やめないで」メールの末に「しょうがないな…」と再び重い腰を上げ、連載再開、なんてことにはならず、多分誰も100本に到達したことにも連載終了したことにも気づかず、僕の方も書かないことに飽きて、また一人黙々と反響もないまま連載再開というパターンだろう。多分。

って、無駄な予測をしている場合ではなく、100までの数少ないアルバム・レビューには何を取り上げるべきなのかなあと考えた。で、まず選んだのがこのアルバム。

久々にラックから出してCD-ROMに挿入、「ぴろ〜っろ〜ん」と例のギターが始まったが、なんか「ブッ」という音が入る。む、まるでリッピングに失敗したMP3のようである。
「どうなってんのよ」と思ってCDを取り出して再生面を見てびっくり。傷だらけである。

そうなのです。傷だらけなのです。なぜならこのアルバムは多分この世に存在しているアルバムの中で、一番多く私が聴き込んだものだから(笑)。
初めて自分で買ったビートルズ関連のアルバムがこれ。LPだった。その後CDプレイヤーを買ったので、CDもすぐ購入。LP、CD、カセット・テープでトータルで何回聴いたのでしょう? 想像もつきません。1000回に迫っていたりするのでしょうか。そんなに聴いて飽きないかって? 飽きました(笑)。

まあ、一応おきまりのアルバム紹介をしておくと、82年のなんとも気の抜けたアルバム『ゴーン・トロッポ』以来、ハンド・メイド・フィルムでの映画製作などを主な活動場所としていたジョージの久々の音楽カムバック作。
このアルバム、ジェフ・リンとの二人三脚というか、ジョフ・リンの二人羽織というか、まあ彼の色が非常に強いアルバムではある。ジョージが再び音楽作りに入った理由は定かではないけれど、ジョフ・リンの口説きによるものだったのではないでしょうか。家が近所で頻繁に往復していたそうですが、ジェフ・リンからしたら、ジョージのアルバムを作りたくて作りたくて仕方なかったのでは。「自分の手で自分のアイドルを復活」させるのが当時の生き甲斐だったようなので。
実際、その後ジェフ・リンはブライアン・ウィルソン、ロイ・オービソン、デル・シャノン、リンゴ、ビートルズ、ポールと次々手掛けていくことになる。

基本的なメンバーはドラムのジム・ケルトナー、ピアノがゲーリー・ライト、パーカッションはレイ・クーパー、ブラスにジム・ホーンといういつもの顔ぶれ。十年一日です。そこにゲスト的に[1]にクラプトン、[4]にエルトン・ジョン、[6]にリンゴが加わると。

当時ハンド・メイド・フィルムを抱えていたジョージだけにビデオ・クリップは結構凝っていて、全米1位を獲得した[11]は、おもちゃのバレリーナが本物の女の子に変身して踊り出すバージョンと、ジョージが途中椅子の上でバク宙を見せる(当然吹き替え)の2バージョンがあった。前者はMTVの「特殊効果賞」か何かにノミネートされていたような。
あんまりヒットしなかったが、超ビートルズっぽいと話題になったセカンド・シングルの[6]も、ビデオはかなり面白かった。一瞬「ハロー・グッバイ」風の衣装を着たり(これも多分振き替え)、ジョージのとリンゴ、そしてウォーラスの着ぐるみがリッケンのベースを演奏、そこにジョンの写真を持った男が画面を横切り、「TV画面の中でビートルズが再結成?」なんて言われたりも。しかもそのウォーラスの着ぐるみの中身は本当にポールだった、なんて話が後から出てきたり、画面を横切る人物はクラプトンなんでは?なんて言い出す人が出てきたり、とにかく面白いので、未見の人はぜひ。

他にシングル絡みの話では、セカンド「ファブ」のジャケはクラウス・ヴアマンのペンによる87年当時のジョージの肖像。しかもそのジョージが『リボルバー』のジョージの顔を手にしているというもので、大興奮してドーナツを買ったりした。そう、ドーナツだったのですよ、まだ。
そしてサード・シングルの「ディス・イズ・ラヴ」はCDシングルの形で発売されたりして(ドーナツも存在したのかもしれませんが)、「ああ、時代は本当にCD時代なのだなあ」と思ったのを覚えてます。

アルバムの中身的には、まあ、当然ジョージの全アルバムの中で最もポップであることは保証します。だから、せめてこのアルバムくらいは買って聴いてね、って感じで深く書きませんが、よく言われる「ジェフ・リン問題」について。
このアルバムは先に書いたように、確かに彼の色が強いものではあるが、ジョージのアルバムを、『33 1/3』、『慈愛の輝き』、『想いは果てなく』と聴いていくと、このアルバムの音というのはそれ程「突然」なものではないということ。特に『想いは果てなく』とこのアルバムの音というのは、かなり似通った作り方をされている。(間に挟まっている『ゴーン・トロッポ』はよく分かりませんですが。湯川れい子のライナーがハイライトか?)

だからまあ、これは単なる傀儡アルバムでもなくて、ジョージが嗜好した音をうまいことジェフ・リンが実現してくれたアルバムなのかな、などと思います。
と書きながら、1000回目だか1001回目だか知らないが、このアルバムをまた聴いてます。(うらわ)

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George Martin
"In My Life"
Produced by George Martin & Gile Martin
('98)
All Songs except 7,10&12 Written by John Lennon/Paul McCartney
7 by George Harrison
10&12 by George Martin

1.Come Together
/Robin Williams & Bobby Mcferin
2.Hard Days Night
/Goldi Hawn
3.Day In The Life
/Jeff Beck
4.Here There & Everywhere
/Celine Dion
5.Because
/Vanessa Mae
6.I Am The Walrus
/Jim Carry
7.Here Comes The Sun
/John Williams
8.Blackbird
/Bonnie Pink
9.Being For The Benefit Of Mr.Kite
/Billy Connolly
10.Pepperland Suite
/George Martin
11.Golden Slumbers Carry,The Weight,The End
/Phil Colins
12.Friends & Lovers
/George Martin
13.In My Life
/Sean Connery

・ブック・オフで買ったCDシリーズ(1)

シリーズ化するほどのものでないが、ブック・オフで買ったCDです(笑)。
ブック・オフは本来古本屋だが、なかなか強力である。そんじょそこらの本屋ではかなわない品揃えを、結構きれいな品で並べている。
中古CDもかなりの数置いているが、そこは所詮は古本屋。レンタルCDから流れてきたとおぼしき品を大量に並べているだけである。リチャード・マークス同じもの4枚とか、リック・アストリーひと揃えとか、TVドラマのサントラとかね。

はっきり言ってどうでもいいラインナップだが、古本の買い取りの査定待ち時間とかにじっと見てると、結構面白いものも混じっている。これがブック・オフ以外の場所だったら「面白い」とも思わないし、「買おうかな」とも思わない品だが。

これもそんな1枚。ジョージ・マーティン引退作『イン・マイ・ライフ』。買わないわな、普通の精神状態だったら(笑)。
って、不愉快に思った人が居たらすいません。この手のカバーもの、昔東芝EMIが出した2アイテムを買って以来、なんか、拒絶反応が。伊藤銀次の『ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ア・ダイアモンズ』がまだ耳から離れなくって(笑)。

って、今回(笑)が多いな。もう一つつけとこうか(笑)。

全然期待しないで聴いたが、これが結構よい。よいのですよ、やはりジョージ・マーティン印は。

[1]はロビン・ウィリアムズ。ジョージ・マーティンがかつてピーター・セラーズやスパイク・ミリガンのレコードのプロデュースをしていたのは有名だけど、本気で好きなのね、コメディアン。
最近「海の向こうの西田敏行」っぽくて鼻についていたロビン・ウィリアムズだが、許す。というか、ジョージ・マーティンの仕事がやはり素晴らしい。本当に『アビー・ロード』をプロデュースした人だということを改めて思い知らされる(チープ・トリックの『オール・シュック・アップ』をプロデュースした人でもあるけどね〜)。

[2]:これが僕にとっての本盤ベスト・トラック。歌っているのはゴールディー・ホーン。コメディエンヌも好きなようで(笑)。ウッド・ベースにブラシのドラム、ミュート気味のトランペットをバックにひたすらジャジーに歌っています。驚いたことに、歌、無茶苦茶うまいです。
「こんな風にアレンジしてみました〜」じゃなくて、最初からこういう歌だったと思わせる見事なG・ホーン&G・マーティン・コンビのお仕事。2人でアルバム1枚作ってもらいたいです。

[3]:なんだよ、インストかよ、うっとおしいなあ、一人くらいいるんだよな、勘違いやろうが、と思ってブックレットを見たらジェフ・ベックでした(ゲッ)。とたんに有り難く聞こえます〜。『ブロウ・バイ・ブロウ』コンビですからね、なんといっても。現在のサウンド・プロダクションで再現された例の「宇宙への発射音ストリングス」も圧巻。

[4]:私はフランス語しか話せませんでした(笑)。おじいちゃんたら、結構ミーハーなんだから(笑)。

[6]:あのジム・キャリーに『アイ・アム・ザ・ウォーラス』を歌わせる! もうアイディアだけで勝ったも同然でしょう。すばらしい。草葉の陰でジョンも悔しがっているでしょう。やられたと。もし日本人に歌わせるとしたら、やはり藤井隆でしょうな(笑)。
インストはほぼオリジナルを再現したものだが、恐ろしく重層的で完成されたアレンジだ。この曲はジョンとジョージ・マーティンの共作と言ってもいいくらいかも。

[8]:日本盤のみのボーナス。「日本のレコード会社に推薦された」とのこと(東芝EMIのことだろうね)。だからどうせ推薦するなら藤井隆を紹介しなさいよ。コメディアン好きなんだから。絶対受けるって(笑)。

この曲のジョージ本人のコメントを読んでびっくり。「ビートルズのオリジナル・トラックでは、本物の小鳥をスタジオにつれてきて、実際にさえずる声を入れたが…」 ええぇっっ、そんな話し始めて聞いたぞ! 本当っっ!? と思い『ビートルズ/レコーディング・セッション』を調べたら、「アビィ・ロードのサウンド・エフェクト・コレクションの第7巻:鳥の声に収められていたもの」とある。自分の家の裏庭でそれを録音したという、スチュアート・エルサムという人ののコメントまでついている。どうも、こっちの方がホントっぽいが、どうなんでしょうか。
お、おじいちゃん、まさか…。ボ…。

[11]は本作の中でもコピー度が高く、この人("A Hard Day's Night"にも出演していたというこの人)、好きなんだね〜ビートルズ、という感じ。でも、ドラム・ソロは少し長くなってて笑える。ドラマーとしての本性がうずいてしまったのでしょうか。

[13]:語りはなんとショーン・コネリー。ハムのCMみたいな気もするが、味、なんですかね。これをもし日本人がやるとしたら、山崎努辺りでしょうか、やはり。

ブック・レットに寄せられているジョージ・マーティンのコメント。これがいいのです(当然柳生博の声で読みましょう)。『耳こそは全て』もそうだったが、この人の文章は「誇り高くて」「明晰で」「どちらかというと理系的で」「堅いユーモアが感じられて」大好き。全然関係ないが、同じイギリス人であるSF作家、アーサー・C・クラークの文章をいつも思い出す。一部「あれ?」って思う部分もありますが(笑)。
(うらわ)

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"In My Life"

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