| "慈愛の輝き"の項に続き、『Super
Beatle 90's Issue』を肴にした「博士堂」でのジョージ与太話はしつこく続く。
中坊「次はいよいよ80年代に突入して『想いは果てなく』ですね」
博士「その邦題ってジョージの全アルバムの中で一番定着してないわな」
81年の作品。邦題は『想いは果てなく〜母なるイングランド』。もともと80年11月に発売される予定だったが、ジョンの『ダブル・ファンタジー』と発売時期が重なってしまうのと、レコード会社の「コマーシャルでない」というクレームで発売が遅れた。
結局ジョージが折れる形で四曲が入れ替えられ、ジャケットも変更となった。新たに加えられたのは[1][4][5][9]。その録音中に、ジョンの悲報が届いたのだろう。
目玉曲はやはりジョンへの追悼歌[4]だろうか。バックにはリンゴ、ポール、リンダ、デニーレーンらが参加し、ジョージ・マーティン、ジェフ・エメリックとビートルズ時代の裏方二人組も協力している。そこでは、ジョンやビートルズに対する世間の無理解や冷たい態度が中心に歌われていて、ポールが「ヒア・トゥデイ」で、ジョンに対する個人的な愛情をシンプルに歌ったのと対称をなしている。
ところでこのアルバム、聴いた印象が『クラウド・ナイン』に似ている(正確には『クラウド・ナイン』が似ているんだけど)。ポップな[1]や[6]や、美しいバラード[3][8]など、メリハリがあり、どれも粒ぞろいである。
しかし、おめおめとレコードの会社の売れ線強要路線に屈するジョージではない。[1]では「この曲は好きだけど、マーケットでは時代遅れと奴らは言う」といきなり皮肉が飛び出す。さらにLPの袋には自分の顔中に針を刺しまくっている、すっげー気持ち悪い写真を載せている。針治療中なのか何かの修行中なのか知らないが、とにかく気持ち悪い〜。こんなもの掲載するのって、レコード会社への復讐としか思えない〜。迷惑なのは買う人間です。
アルバムは最高位11位を記録。シングル[4]はラジオ&レコードのチャートでは1位を獲得するなど、久々の大ヒットとなった。
このアルバムを聴けば、『クラウド・ナイン』の音というのが突然現れたものではく、ちゃんと脈絡のあるものだと分かるだろう。
なっちゃん「『顔中に針を刺しまくっている、すっげー気持ち悪い写真』って見たことないんだけど、どんなの?」
博士「え、見たことないの? (商品棚からレコード持ってきて、内袋を差し出す) ほれっ」
なっちゃん・中坊「ぎょえ〜!!」
博士「まあ、この写真のせいでこのアルバムが嫌いになった人もたくさんいるだろうな。とにかく乞われて行ったワーナーだけど、このアルバムをリリースする頃にはギクシャクしまくってたみたいだね。差し替えられたジャケというのも今見ると『慈愛の輝き』に少し似た、神秘的なジョージの顔写真で、よっぽど趣味がいいと思うのだけどね」
中坊「内容的にも結構ポップみたいなことが書いてありましたが?」
博士「うん。すごく聴きやすいアルバムなんじゃないかな。その分、ディープなジョージ・ファンには逆に軽く扱われている気もするけど」
なっちゃん「カバーはどっちもホーギー・カーマイケルの作品ね」
中坊「『スター・ダスト』や『ジョージア・オン・マイ・マインド』の作者の方ですよね」
博士「うん。まあ、この2曲に関してはレコード会社との軋轢の末の選曲なので、どこまで前向きなものなのか分からんけどね。『ボルティモア・オリオール』なんかは過剰なまでの泣きなアレンジで、ほとんど演歌的だわな。『ホンコン・ブルース』はお遊び的選曲なんだろうねえ。ジョージは一体誰のバージョンを念頭にカバーしたのかな…。どちらの曲もいろーんな人が取り上げてるからなあ」
なっちゃん「私でも聴いたことがあるのが『過ぎ去りし日々』だけど、これってリンゴやポールも参加しているのね。おまけにジョージ・マーティンやジェフ・エメリックまで」
博士「それをいうなら、もともとこのアルバムのエンジニアは、ビートルズ時代からお馴染みのフィル・マクドナルドでもあるんだよ」
中坊「その人、この間出たバッドフィンガーの『ヘッド・ファースト』も手掛けているし、すっごく息の長い『仕事人』の一人ですね」
(うらわ) |