Album Review "G" #3
アルバム・レビュー"G"その3



George Harrison
"33 & 1/3"
Produced by George Harrison ('76)

All Songs except 7 Written by George Harrison
7 by Cole Porter

1.Woman Don't You Cry for Me
(僕のために泣かないで)
2.Dear One
3.Beautiful Girl
4.This Song
5.See Yourself
6.It's What You Value
7.True Love
8.Pure Smokey
9.Crackerbox Palace
(人生の夜明け)
10.Learning How to Love You
(愛のてだて)

"Dark Horse"の項に続き、『Super Beatle 90's Issue』を肴にした「博士堂」でのジョージ与太話はまだまだ続く。
博士「EMIからワーナーにかわった節目のアルバムが『33 1/3』だね」
中坊「ちょっと前にAMGのジョージのソロのディスコグラフィーを見たんですが、そのアルバム、星印が四つ半で、すごい評価が高くてびっくりしたんですが、10年前のその本では何とかいてあります?」


題名の『33&1/3』とはLPレコードの回転数と、ジョージの当時の年齢をかけたもの。76年にワーナー移籍第1弾として発表された。

レコードに針を落とすと、意外にもファンキーなリズムが飛び出してきてまず驚かされる。移籍を機にジョージは大幅にスタイルを変えた。全体に「当時風」のくっきりとしたビートを取り入れ、シンセサイザーを多用にして全体に明るい感じに処理、ポップにしようという姿勢が見られる。

歌詞の面ではにははっきりと宗教的内容のものは[2]くらい。これは、サージェント・ペパーズのジャケにも登場しているパラマハンサ・ヨーガナンダ(番号でいうと33番。出来すぎた話だ)というクリヤ・ヨーガの行者に捧げた曲。
そして、「マイ・スィート・ロード」絡みの[4]、スモーキー・ロビンソンを歌った[8]なんかが面白いところか。[8]なんかはジョージなりのソウルの解釈といえるかも。とってもソフトでAORな仕上がり。
また、当時のA&Mレコードとの裁判ざた(ダーク・ホース・レーベルの配給権を急遽A&Mからワーナーに移したことから生じた)を、静謐なバラード[10]に仕上げるなど、随分と大人な余裕ぶり。そういう裏話的な話を知らない限り、単なる美しいラヴ・バラードである。

しかし、様々な努力にも関わらずアルバムは11位止まり。十分大ヒットといえる順位だが、ソロとしても一度頂点を極めたジョージとしては不満だったろう。「ジス・ソング」と「人生の夜明け」はどちらもスマッシュ・ヒット(「人生の夜明け」は19位)。ただ、この時点で全ての試みが成功しているかどうかはともかく、ジョージの新たな方向性を示したアルバムだったことは確かだ。



なっちゃん「とにかく明るいアルバムっぽいことが書いてあるわね」
中坊「『レコードの針を落とすと』いう表現はLPしか出ていなかった当時をしのばせるね。AMGの評価はともかく、割りといいアルバムなんじゃないかな。今いち日本で人気がないのは大ヒット・シングルが収録されていないからかな」
中坊「でも、それを言ったら、同じようにこれといったヒット曲がない『慈愛の輝き』は結構人気があったりしますよ」
博士「そうじゃね…。(展開に不利さを感じて話題を変える) そいうえば、このアルバム唯一のカバーが『トゥルー・ラヴ』なんじゃが、この曲聴いて分かるかな?」
(博士、CDプレイヤーに『33&1/3』を挿入。「トゥルー・ラヴ」をかける)
なっちゃん「……。単なるスライド弾きまくりの半音コード進行の入ったジョージ・ソロにしか聞こえない…。言われなきゃカバーとも思わないかも」
中坊「僕はこの曲聴いたの初めてではないけど、聴き流していたなあ。これ、元歌有名なんですか? 敢えて言えば、仲井戸麗一の『はぐれた遠い子供達へ』に似ているかな…」
博士「それは順番逆でしょ。そっちが似てるの。うーん、わからないかな」
(今度は博士、なにやらLPを取り出し、かける)
なっちゃん「あれ!? 聴いたことがある。これ、すごく有名な曲よね」
博士「そうじゃろ。意識したことはあるなしに関わらず、誰もが何度か聴いたことがあるスタンダード・ナンバーじゃからな」
中坊「これって誰が歌っているんですか?」
博士「ビング・クロスビーじゃよ。最後ちょっと一緒に歌うやや音痴な女性の声はグレース・ケリー。1956年のミュージカル映画、『上流社会』の挿入歌だったんじゃ」
中坊「確かに聴き比べると同じ曲だけど、結構衝撃を受けるくらいの変わりぶりですね!」
博士「まあ、『バイ・バイ・ラヴ』に続く、無茶カバー第2弾という感じなのかな。もっとも、こちらはジョージ風にうまいこと料理していて、なかなか爽やかな仕上がりだよね。より元歌に親しんでいる欧米人は、きっと大笑いしながら聴いたんじゃないかな」

(うらわ)

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George Harrison
"George Harrison"
Produced by George Harrison ('77)

All Songs Written by George Harrison

1Love Comes to Everyone
(愛はすべての人に)
2.Not Guilty
3.Here Comes the Moon
4.Soft-Hearted Hana
5.Blow Away
6.Faster
7.Dark Sweet Lady
8.Your Love Is Forever
9.Soft Touch
10.If You Believe

"33 & 1/3"の項に続き、『Super Beatle 90's Issue』を肴にした「博士堂」でのジョージ与太話はさらに続く。
なっちゃん「それにしてもこのディスコ・グラフィー、ジョージ・ファンの人が書いたんでしょ? その割りには全体的に皮肉っぽいというか、あんまり素直に誉めてないわよね」
中坊「いや、きっと『下げてから上げる』というパターンですよ。けなすだけけなしといて、『だがコレは…』はなんて誉める」
博士「一番タチの悪いというか、安易な方法じゃな。大方、『慈愛の輝き』あたりを持ち上げているんじゃろ」


邦題は『慈愛の輝き』。
前作『33 & 1/3』の後、自動車レースに逃避してしまっていたジョージが心機一転して取り組んだ77年の作品。"George Harrison"の題名からもジョージの自信の程が分かる。淡く明るい色調のジャケット通りの美しい作品となった。クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドの参加も話題となった。

ジョージの創る曲の特徴は、半音コードに代表される得意なコード進行と、ビートがはっきりしない浮遊感であるが、『ジョージ・ハリスン帝国』のようにそれがうまくいったときは素晴らしいが、一歩間違うとアンチ・コマーシャルなものになってしまう要因にもなる。
本作ではそのどちらの要素もほぼ排され、より親しみやすい自然なスタイルとなっている。前作のように意識的なビートの導入やポップ指向とは違ってさりげないし、また無理にオリジナルなものにしようというは、単に楽しい曲を作っているといった印象だ。
そして、後々のジョージにまで通ずる、アコースティック・ギターをベースに全体に薄いシンセを被す音の処理の方法は、ほぼこのアルバムで完成されたと言ってよい。

曲目を見るとまず、[2]"Not Guilty"と[3]"Here Comes The Moon"という曲に目がとまる。前者はビートルズ時代の未発表曲のリメイクである。後者は『アビー・ロード』収録のあの名曲の続編ともいうべきもの。ハワイで見た巨大な月に触発されて作ったということだが、曲自体は題名ほど面白いかどうか…、さあみんな実際に聴いて判断しよう!(って、なんか言葉を濁しているような気も…)

シングル[5]は16位、アルバム自体は14位。まあ、大ヒットしてバカスカ売れちゃうようなタイプのアルバムではないし、本人的にもそういった狙いは最初からを放棄していたのでは? いい意味で開き直ったアルバムという気がする。
全編続くホンワカジョージ節。どんな不眠症の人でも絶対途中で眠くなることうけあいの名盤。



なっちゃん「うーん、誉めてるような、けなしてるような、相変わらずはっきりしない文章ね」
中坊「まあ、誉めるんじゃないですか? でも、ジョージ・ファンを長いことやってると、きっと素直さが欠けてくるんじゃないかな。やっぱすべてが微妙ですからね」
博士「いいアルバムだけど、眠くなるのは間違いないね。全曲ミデアム・テンポかスロー・バラードで、一曲一曲も長め。わざとじゃないかと思うほどメリハリはないわな」
なっちゃん「私の印象も、アルバム全体が長ーい1つの曲という感じ」
中坊「ところで、『ノット・ギルティー』は今では『アンソロジー』に収録されていますが、この文章が書かれた頃は当然聴けなかったわけですよね?」
博士「いや、『セッションズ』という有名なブートレグに収録されていたから、大方の熱心なファンはもう聴いていたよ。それにしてもこの曲、ビートルズの時は102テイクという執拗な録音をして結局ボツッたことは有名な話だわな」
なっちゃん「102テイク! すごいわね!」
博士「まあ、テイク数は途中で桁上げをしたり、未完成のテイクなども大量にあるから額面通りには受け取れないけど、ビートルズをもってしてもどうにもなんなかったんだろうな」
中坊「『ノット・ギルティー』と『ヒア・カム・ザ・ムーン』を並べているのはわざとなのかな? この人は昔の音源やら曲やら持ってきたり、続編を作ってみたり、自分自身の本歌どりが好きですね」
博士「うん。そのうち作るんじゃないか、『サムシング』の続編も…」
3人「……」
冗談のつもりで言った博士も含め、「本当に作りそうで怖い!」と沈黙してしまう3人だった。

(うらわ)

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George Harrison
"Somewhere In England"
Produced by George Harrison ('81)

All Songs except 5&9 Written by George Harrison
5 by Carmichael
9 by Carmichael/Webster

1.Blood from a Clone
2.Unconsciousness Rules
(空白地帯)
3.Life Itself
4.All Those Years Ago
(過ぎ去りし日々)
5.Baltimore Oriole
6.Teardrops
7.That Which I Have Lost
8.Writing's on the Wall
(神のらくがき)
9.Hong Kong Blues
10.Save the World
(世界を救え)

"慈愛の輝き"の項に続き、『Super Beatle 90's Issue』を肴にした「博士堂」でのジョージ与太話はしつこく続く。
中坊「次はいよいよ80年代に突入して『想いは果てなく』ですね」
博士「その邦題ってジョージの全アルバムの中で一番定着してないわな」


81年の作品。邦題は『想いは果てなく〜母なるイングランド』。もともと80年11月に発売される予定だったが、ジョンの『ダブル・ファンタジー』と発売時期が重なってしまうのと、レコード会社の「コマーシャルでない」というクレームで発売が遅れた。
結局ジョージが折れる形で四曲が入れ替えられ、ジャケットも変更となった。新たに加えられたのは[1][4][5][9]。その録音中に、ジョンの悲報が届いたのだろう。

目玉曲はやはりジョンへの追悼歌[4]だろうか。バックにはリンゴ、ポール、リンダ、デニーレーンらが参加し、ジョージ・マーティン、ジェフ・エメリックとビートルズ時代の裏方二人組も協力している。そこでは、ジョンやビートルズに対する世間の無理解や冷たい態度が中心に歌われていて、ポールが「ヒア・トゥデイ」で、ジョンに対する個人的な愛情をシンプルに歌ったのと対称をなしている。

ところでこのアルバム、聴いた印象が『クラウド・ナイン』に似ている(正確には『クラウド・ナイン』が似ているんだけど)。ポップな[1]や[6]や、美しいバラード[3][8]など、メリハリがあり、どれも粒ぞろいである。
しかし、おめおめとレコードの会社の売れ線強要路線に屈するジョージではない。[1]では「この曲は好きだけど、マーケットでは時代遅れと奴らは言う」といきなり皮肉が飛び出す。さらにLPの袋には自分の顔中に針を刺しまくっている、すっげー気持ち悪い写真を載せている。針治療中なのか何かの修行中なのか知らないが、とにかく気持ち悪い〜。こんなもの掲載するのって、レコード会社への復讐としか思えない〜。迷惑なのは買う人間です。

アルバムは最高位11位を記録。シングル[4]はラジオ&レコードのチャートでは1位を獲得するなど、久々の大ヒットとなった。

このアルバムを聴けば、『クラウド・ナイン』の音というのが突然現れたものではく、ちゃんと脈絡のあるものだと分かるだろう。



なっちゃん「『顔中に針を刺しまくっている、すっげー気持ち悪い写真』って見たことないんだけど、どんなの?」
博士「え、見たことないの? (商品棚からレコード持ってきて、内袋を差し出す) ほれっ」
なっちゃん・中坊「ぎょえ〜!!」
博士「まあ、この写真のせいでこのアルバムが嫌いになった人もたくさんいるだろうな。とにかく乞われて行ったワーナーだけど、このアルバムをリリースする頃にはギクシャクしまくってたみたいだね。差し替えられたジャケというのも今見ると『慈愛の輝き』に少し似た、神秘的なジョージの顔写真で、よっぽど趣味がいいと思うのだけどね」
中坊「内容的にも結構ポップみたいなことが書いてありましたが?」
博士「うん。すごく聴きやすいアルバムなんじゃないかな。その分、ディープなジョージ・ファンには逆に軽く扱われている気もするけど」
なっちゃん「カバーはどっちもホーギー・カーマイケルの作品ね」
中坊「『スター・ダスト』や『ジョージア・オン・マイ・マインド』の作者の方ですよね」
博士「うん。まあ、この2曲に関してはレコード会社との軋轢の末の選曲なので、どこまで前向きなものなのか分からんけどね。『ボルティモア・オリオール』なんかは過剰なまでの泣きなアレンジで、ほとんど演歌的だわな。『ホンコン・ブルース』はお遊び的選曲なんだろうねえ。ジョージは一体誰のバージョンを念頭にカバーしたのかな…。どちらの曲もいろーんな人が取り上げてるからなあ」
なっちゃん「私でも聴いたことがあるのが『過ぎ去りし日々』だけど、これってリンゴやポールも参加しているのね。おまけにジョージ・マーティンやジェフ・エメリックまで」
博士「それをいうなら、もともとこのアルバムのエンジニアは、ビートルズ時代からお馴染みのフィル・マクドナルドでもあるんだよ」
中坊「その人、この間出たバッドフィンガーの『ヘッド・ファースト』も手掛けているし、すっごく息の長い『仕事人』の一人ですね」

(うらわ)

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