| 例えば、タモリのレコード。井上陽水が「アジアの純真」の作詞を手掛けたときに影響を受けたのは有名な話だが(そう?)、まあ、そんなことを抜きにしてもタモリの一連のギャグ・レコードは素晴らしい。
変な妄想を一つ。タモリのレコードがロンドンの中古屋に置いてあって、予備知識のないイギリス人が何となく購入。聴いてみて、「結構いいじゃん、なんか面白いし。意味分かんないけど」なんて思ってる場面を想像してみる。かなり、シュールな場面か。
日本人である僕が新宿のレコード屋でこのフォー・バケッターズのレコードを購入。一聴、「いいじゃん」と気に入る。歌詞やらセリフやら、何言ってるのかもほとんど分からないにも関わらず。多分イギリス人からしたら、相当シュール且つ不可解な場面だろう。
まあ、私の場合ビートルズの歌詞もほとんど分かってないし、雰囲気もので音楽を聴く習慣がついてしまっているので、お許し頂きたい。って誰に許しを乞うているのか分からないが、まあとにかくこのアルバムが気に入りました。
このレコード、一体何かといえば、"TISWAS"というイギリスで74年から82年にやっていたテレビ番組のサウンド・トラック、とでもいえばいいか。TISWASというのは"Today
Is Saturdady - Wear A Smile"の略、らしい。まあ、「8時だよ!全員集合!」とか「オレ達ひょうきん族」同様、洋の東西を問わず土曜というのは定番子供向け番組が生まれやすい曜日なのか。
ただ、午前中からやっていた番組らしい。イギリスの小学校はこんな昔から週休二日制が導入されていたのか、と余計なことまで考えてしまうが、ともかく、"SWAP
SHOP"という番組とどちらを見るのか、イギリスの子供達は朝っぱらから頭を悩ましていたらしい。
まあ、らしい、というだけで、本当のところは知らない。僕もウェブを適当に検索してさっきこの番組に関するページをざっと見ただけだから。しかし、WEBや、このレコードのスリーブの番組風景の写真などを見ると、かなり滅茶苦茶かつシュールな番組っぽい。さらに子供を客席に大量に呼んでそれもダシにしつつ番組は進行していったのようで、想像しただけでやかましそうだ。
フォー・バケッターズというのは、このTISWASの出演者達(クリス・タラント、サリー・ジェイムス、ボブ・キャロルギース、ジョン・ゴーマンら)が名乗っていたグループ(?)みたいなもの。何だかよく分からないが、バケツで水をぶっかけまくっていたらしい。
ジョン・ゴーマンという名前が出てきて、「あ、なるほど」と思った人もいると思います。ジョン・ゴーマンといえば、ポールの弟であるマイク・マクギアらとスキャッフォルドを組んでいたお人。
更にこのアルバムのプロデュースは、なんと「元ボンゾズ兼元ラトルズ」のニール・イニス(ただし番組テーマ曲[12]を除く)。そして、参加ミュージシャンの中にはオリー・ハルセールやジョン・ハルセイというやはり元ラトルズのメンバーの名前も見える。僕が買ってしまったのも分かるでしょう?
針を落としてまずひどいスクラッチ音に驚かされました。ブチブチいってる。あわてて盤面を確認。傷もないし、きれいなものである。で、もう一度聴いてもやはりひどい音がするので「何で?」と思ってたらそういうギャグでした。
番組内でのコーナーやギャグ絡みのものが多いので、細かいところは分からないが、賑やかで、単なるBGMとして聴いていても割りと楽しいアルバムである。何しろイニスがプロデュースだ。作曲者のクレジットの大半はジョン・ゴーマンを中心とした出演者ということになっているが、編曲者としての彼の存在もかなり大きかっただろうと想像できる。雰囲気としてはスキャッフォルドのアルバムやジョン・ゴーマンのソロを更に騒がしくしたような感じだ。[2]や[12]なんてもろ「リリー・ザ・ピンク」風行進曲。
[4]は「死にかけハエ体操」として番組内で子供達を床に仰向け寝っころがして、手足をバタつかさせていたらしい。タイトルもひどいが、最後「葬送行進曲」で曲が終わっていてかなりブラックだ。[23]も「肥溜めコーナー」のテーマ曲。ひどいわな(笑)。なんか写真を見るに、いわゆる「パイ投げ」を更に激しくしたようなものだったらしく、とにかくみんな真っ白け。童謡風に可愛く始まって、途中から「肥溜めコーナー!」とひたすら絶叫。
[9]はポップ・アーティストを呼んでサリー・ジェイムスがインタビューするコーナーのパロディーになっている。番組にはエルヴィス・コステロとか登場していたらしく、結構ヒップでいけていたのかもしれない。
[10]や[16]はあくまで馬鹿々々しいオールド・スタイル・ロックン・ロールだが、オリー・ハルセールがギターを弾きまくっていて結構かっこいい。
[26]はサリー・ジェイムスの拙いボーカルながら、"The Innes Book of Records"にでも収録されていそうな、いかにもこの時期のイニスっぽくて、割りと好きです。
ボンゾズも子供向けTV番組でブレークしたことや、ラトルズがテレビの企画から始まったこと、それにイニスが「ブック・オブ・レコード」という番組を長いことやっていたことを考えても、イギリスのTV番組、特にお笑い/子供番組はあなどれない。ここら辺、ラジオ時代から受け継がれた伝統と考えるべきなのか、やはりビートルズが生まれた国はひと味違うと考えるべきなのか。必要以上に「本気」で音楽も作っている。日本ではせいぜい「ハッチ・ポッチ・ステーション」程度か。もっとがんばれ、グッチ裕三。
(うらわ) |