| ビートルズ・ヒストリー物の本などを読んでると、70年代初頭の四人について大抵次のような事が書いてある。
1.ビートルズのアルバムでは2曲までしか発表する場を与えてもらえなかったジョージが、鬱憤をはらすように3枚組の傑作『オール・シングス・マスト・パス』を出し、元ビートル初のNo.1シングルも出した。
2.ジョンは『ジョンの魂』、『イマジン』といった自分の内面をさらした傑作を出した。
3.もっとも音楽的活動から縁遠くなると思われたリンゴは意外なことに70年代前半ヒット・シングルを連発した。
4.ポールは『マッカートニー』を出しヒットするも評論家から酷評された。つづく『ラム』、『ワイルド・ライフ』も同様。
まあ、どれも本当の事なんだろうけど、例えばジョージ『オール・シングス...』なんかは、大作だし、いい曲もあるだろうが、無条件に傑作と言いきるにはちょっと引っかかるものがある。本当に3枚目は必要だったのかな、とか。
ジョンに関しては、確かに先の2枚は素晴らしい作品なんだけど、リアル・タイムに書かれた文章を見ると「最近不振」とか「チャートで苦戦」とかいうのを割と見る。当時の受け止められ方は今とはだいぶ違った様だ。
ポールに関して言えば、当時の反応は冷ややかだったのは間違いない。ビートルズ時代の彼のイメージはクールで端正かつ素晴らしいメロディを次々書く人、というところでしょうか。ところがソロとして出した音は全然違っていた。
実際の彼はかなり不可解な人物である。単純なのか複雑なのかも不明である。『マッカートニー』というのも、サウンド面だけでなく、人間的にも自分自身をさらした『ポールの魂』とでも言える作品なのではないでしょうか。彼の狂気じみたところがよく出ていると思う。
しかし、そんなことも後から言えることであって、リアル・タイムに聴いていたら僕も失望したかもしれない。なんじゃこれは、だったかもしれない。
じゃあ、どんな音だったらみんなが納得したかといえば、このエミット・ローズみたいな音だったら、みんな納得したんではないでしょうか。ホワイトや『ラム』辺りのポールをさらに端正にした印象である。
エミット・ローズは「ポール系ミュージシャン」としてよく紹介される人で、曲調だけでなく声も少し似ている。[18]なんかはわざとかもしれないが、ホント似ている。「未発表曲だよ」と聴かされたら騙されちゃいそう。
彼はアメリカ人で、元々メリー・ゴー・ラウンドというバンドで活躍していた。マルチ・プレーヤーでソロになってからは自宅のガレージで一人多重録音に励んでいた。
ここで聴けるのも、そんな彼の70年から73年までの独り言であるが(独り言である点ではこのページと同じだね)、例えばトッド・ラングレンの様にサウンド・マニアック的な面はほとんどなく、あくまで爽やか。
[1]〜[12]は70年のファースト・ソロ『エミット・ローズ』がまるごと収録されている。つまり、このベストがあれば基本的にはファーストは要らないのだからお買い得でしょ。[13]〜[18]は71年のセカンド『ミラー』から、[19]〜[22]は72年のサード『フェアウェル・トゥ・パラダイス』から収録。[23]は73年のシングル。
ポール本人のような、聴いた瞬間はまってしまうようなすごいメロディや、マッドな凄みみたいなものは全然ないが、聴きこむとやはりいい曲が多い。(うらわ) |