| その手の音がすきで、「ポップ」だと言われるアルバムは結構聴いてきたと思うのだが、びびっちまう程ポップなアルバムというのは数えるほどしかないような気もする。これは数少ないその一つ。マジでびびりました。
ジェフ・リンというと、音のイメージがビートルズ・ファンには定着してしまっていて「良くも悪くもジェフ・リン」という感じだと思うのですが。アコギを何本もオーバー・ダビング、独特のコーラス、音の定位も大体どの曲も似たり寄ったりで、まあ、ワン・パターンですね。ポールの『メイビー・ベイビー』なんて典型的ですね。「なるほどねえ」と同時に「あーあ」みたいな。
しかし、そのスタイルが定着したのは主に80年代後半にプロデュース業におさまってからであって、60〜70年代の彼というのはやはりすごいっす。
とはいうものの、僕自身このアルバムを聴いたのは実はわりと最近。すげえアルバムをやり過ごしていたものです。
そもそも初っ端[1]の分厚い音、グルーヴ感はなんなんでしょうか? アコギ、シンセ、ストリングス、コーラスがそれぞれ何層にも重なっていて、しかもそれぞれがキャッチーなフックとして機能している。これだけ分厚いのに、埋もれてしまっている音、死んでいる音がない!なんじゃこれは!
こんなの聴いたことないぞ!なんかポップすぎて怖い!とマジで縮み上がりました。
全編コーラス、ストリングスの使い方は本当に恐れ入ります。このアルバムの頃のジェフ・リンは魔法使いですね、ポップの。しかも生まれつきの魔法使いではなく、魔術の研究の結果、謎を解き明かしたところもすごい。
この音作りはまぎれもなくジェフ・リンが長い期間を掛けて独自に確立したもの。あえて言えばクイーンや10ccあたりの影響はあるでしょうが、60年代のアイドル・レースから始まって、ロイ・ウッドとのムーヴ〜初期エレクトリック・ライト・オーケストラ、そしてELOと、彼は問い続け、研究し続けた。「ビートルズってなんなんだろう?」「ポップってなんなんだろう?」
その研究結果がこのアルバムだと思います。ビートルズが発明/拡大した「ポップ」という芸術分野の最終系、どんづまりがこのアルバムという気がします。もう、これ以上はない。もう、こっから先もない、みたいな。2000年現在でもこのアルバムの最北端到達記録はまだ破られていない、みたいな。
「どれか一曲」みたいなことを許さないアルバムですが、やはりビートルズを3周目している人が必聴なのが[13]でしょう。『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』の本歌取りですが、こんな素敵な本歌取り、ちょっと他に思いつかない。(うらわ) |