| ショーン・レノンの『イントゥ・ザ・サン』を聴いてるうちに、ショーンの彼女であり、『イントゥ…』のプロデューサーであり、チボ・マットの音楽的ブレインであるらしい本田ゆかさんに興味が湧いてきた。というのは嘘で、もともとショーンなんかより本田ゆかの方が興味ありありだったのだが、聴いてみないことにはまず話にならないので、とりあえず中古CD屋で売っていた"Super
Relax"を聴いてみた。
これはまあいわゆるミニ・アルバムっちゅうかマキシ・シングルというやつで、"Super Water"の様々なリミックスを中心とした音源で、正直、よく分かんなかった。「ストレンジな音」だというとこまでは分かったのだが、どうもそれ以上には感じられなかった。なんか、「日本人」であることがそのストレンジさの根源で、日本人である僕にはあまりアピールしないような。
安易な引き合いで申し訳ないが、例えばやはりアメリカのインディー系シーンで活躍している少年ナイフとかは、向こうの人が聴いても当然「ストレンジな音」だろうし、日本人の僕が聴いても「うわ〜、ヘンだよ〜、この人達の音。でもかっちょいいかも」と、性別国籍人種を越えた個性を感じさせられる。
だけどまあ、どうもリミックス集だけじゃよくわからんし、しかもちょっと古めの音源だったので、ぜひちゃんとしたアルバムを買ってみたいなあと思ってたところ、うまいこと秋葉のヤマギワに最新アルバムが置いてあったので、ゲットしました。
うーむ、ジャケからして、ショーンのアルバムよりなにか「良きヴァイブ」が感じられるぞ。「良きフォース」かも。[6]で「ユニオン・スクウェアでオビワン・ケノービが私を待っている」なんて歌っているのは偶然ではないかも。
一応ショーン絡みでチボ・マットを紹介しとくと、もともと彼がチボ・マットの二人(羽鳥美保と本田ゆか)に出会ったのはヨーコの"Talking
To The Universe"のリミックスを二人が手掛けたのがきっかけ。その後ショーンは彼女らのツアーにベース・プレイヤーとして参加。ビースティー・ボーイズと知り合ったのも彼女達からの縁だったらしい。
で、このチボ・マットのセカンド・アルバムにはショーンと彼の友人ティモ・エリス(『イントゥ・ザ・サン』にも参加)も準メンバーとして名を連ねている。
ある意味、恐ろしくなるほどの公私混同ぶりというか、もう少し彼氏彼女関係と仕事は分けたほうがいいような気もするが、これは父からの遺伝か、それとも母の教えか。
さて、高橋健太郎氏のライナーによると、この『ステレオ タイプ A』というタイトルには彼女達がアメリカで活動する中で受けた「日本人であること」「女性であること」故に受けた偏見に対するメッセージが込められているとのことだが、ほんと、マジっすよ、音。言っちゃ悪いけど彼氏みたいに(詳しくはここをどうぞ)ふにゃけた断り書きはなし。「圧倒的クオリティーでねじり伏せてやる」というフォースを感じます。
具体的な音を説明するには明らかに僕にはこういう「今の音」を説明するボキャブラリーに欠けるのだけど、羽鳥美保のちょっと舌足らずのラップ/ボーカルに、適度に生楽器やループを使ったヒップ・ホップが基調。でも、バラエティーは相当豊かだ。時に「シャーデー?」と思わせるような、J-WAVEで日曜の夕方に流れてもおかしくないようなサウンドも聴かせる。そして頭の先から足の先まで錬りに練った音の整合性が、多彩さを、トータリティーのあるものにしている。
駄曲は一切ないが、特筆すべきは重厚なバラード[13]の美しさ。また古い例えで悪いけど、エルトン・ジョンの「ロケット・マン」にも匹敵する孤独さ虚無感を感じました。
ただ、この作り込んだ音は向こうの人が望むチボ・マット像とはずれてきている可能性はあるかも。AMGのレーティングもファーストの"Viva!
La Woman"が☆☆☆☆と1/2なのにもかかわらず、本作は☆☆☆。しかし、もう単なる「ストレンジな存在」ではなく、筋トレ走り込みを重ねた上での直球勝負にでたのだ。向こうのシーンでガチンコで頑張る彼女達は野茂並にかっこいい。伊良部や長谷川や佐々木なんてお呼びでないのだ。
(うらわ) |