| 知り合いに、「ホーム・ページに使われているあの犬はなに?」と訊かれたことがある。まあ、
こいつらのことですね。これらはジョージ・スタディーという人の描いたボンゾ犬たちです。ボンゾ・ドッグは日本の「のらくろ」にあたるようなもので、1920年代頃イギリスなどでは大変有名なキャラクターだったそうです。今でもボンゾ犬関係のグッズを集めているコレクターが海外には数多く存在しているらしい。
まあ、普通のビートルズ・ページでは林檎をあしらったマークをトレードマークにしたり、そんな感じでしょうが、当ページの場合、いつの間にか表紙にボンゾ犬というのが恒例になった。当然ボンゾ・ドッグ・バンドに敬意を表して、ということなのだけど、まあ、表しているような表していないような、「アルバム・レビュー」でもボンゾズのアルバムは欠番だらけである。
ボンゾズは当初、ボンゾ・ドッグ・ダダ・バンドと名乗っていました。「ダダ」はダダイズムのだダダですね。ダダイズムっていうのはやはり1920年代に一世を風靡した反芸術的芸術運動。あんまり、というか全然詳しくはありませんが、シュールレアリズムの原型になったような、ある種のナンセンス主義的運動、と解するとイメージが持ちやすいかもしれません。そもそも「ダダ」とはフランス語で「子馬のおもちゃ」の意味。なんで芸術運動の名前に「子馬のおもちゃ」なんて言葉が選ばれたかというと、全然意味がないから。「とにかく意味はない!」と標榜するために敢えて選ばれたわけです。
で、「狂騒の20年代」に大いに共感を持ったらしい彼らは、その時代の象徴であるボンゾ犬、ダダイズムからとって「ボンゾ・ドッグ・ダダ・バンド」と名乗ったのでしょう。リバプールの四人がが「バディー・ホリーがクリケッツだからオレ等はビートルズ」と名乗ったのに比べると、(やや)インテリっぽいっすね。
その後「ダダ」は直接的すぎると思ったのか、このアルバムがリリースされる時には「ボンゾ・ドッグ・ドゥーダ・バンド」と名乗っている。その後「ドゥーダ」もとれて「ボンゾ・ドッグ・バンド」となる。(実際その名前になったセカンドでは20年代的要素は音楽面でも大幅に少なくなっている)
ボンゾズの詳しいレビューなどは、恐らく日本で唯一ちゃんとしたディスコグラフィーを備えていると思われるかぜさん主宰するところの(NIさんもヴィヴ関係の部分を担当されています)Cool
Brittanniaなどをご覧になっていただきたいが、この時点でのバンド・メンバーはヴィヴィアン・スタンシャル、ニール・イニス、ロドニー・スレイター、ロジャー・ラスキン・スピア、レッグス・ラリー・スミス、ヴァーノン・ダドリー・ボヘイ・ノエル、サム・スプーンズの七人。
僕自身、最初にボンゾズに接したのは「マジカル・ミステリー・ツアー」で披露される[7]の「かわいこちゃんに死の車を」だったのだけど、その時の印象は正直あんまりよくなかったですね(笑)。少なくともビートルズ・ライクな音とは思わなかった。単なるエルヴィスの気持ち悪いパロディーにしか見えなかった。
でも、彼らのアルバムを一通り聴くと分かるのですが、これは単なるパロとはちょっと違う。
無理にビートルズに例えて書くと、当初ロイ・オービソンを意識して書いた「プリーズ・プリーズ・ミー」が、テンポ・アップしてハーモニカとか加えたらなんかポップでロックで今までにない音になっちゃった、というのと似た現象で、思いっきり皮肉でねっとりしたエルヴィス風の曲を書いたら、なんだかこの世に存在しないスーパー・ムード歌謡になっちゃった、みたいな。
何だか中毒性のある音で、今では、この弛緩したラッパとピアノ、ボーカル、コーラスが、「プリーズ・プリーズ・ミー」のハーモニカとギター・リフ並に私には鮮烈に聞こえます(笑)。
最初は冗談で始めたと思われる、この「スーパー・ムード歌謡」路線は本人達をも魅了したらしく、『タッド・ポールズ』収録のヴィヴによる「君の心の渓谷」はテレビ出演時の彼らの定番曲となる。(銀色のスーツに身を包んだヴィヴが、情感豊かに豊かに非常に豊かにも一つ豊かに歌い上げる)
ニール・イニスは淡々と横で演奏していたが、その実「スーパー・ムード歌謡歌手」路線がうらやましかったらしく、後のテレビ番組「ブック・オブ・レコード」でヴィヴを越えるような「スーパー・ゴージャス・ムード歌手」ぶりを披露していた。(何しろ衣装に照明がついていた)
って、ほとんどアルバムの説明もしないままこの文章は終わろうとしているのですが(笑)、思いっきりビートルズ絡みの[7]があるとはいえ、20年代スタイルの中心のこのアルバム、音楽的に難解な面はこれっぽっちもありませんが、ビートルズ経由のボンゾズ入門編としてはそれほど適切ではないかも。よりロック色の強いセカンド辺りから聴くとすんなり入っていけるような。で、このアルバムを聴くと、何でビートルズが彼らに受けまくってしまい、映画に引っ張り出したり、ジョンとヴィヴが意気投合して一緒に遊び回ったりしたか、分かるような気もします。(気もしますって、そんな結びありなのか>おれ)
(うらわ) |