| ジェリーフィッシュというかアンディー・スターマーに対してはかなりミーハーな興味を持っているのにも関わらず、なぜか長いことビートニク・ビーチに対しては聴いてみようという発想がなかったというか、ほとんど存在を忘れてました。それが、ある日/突然/急に/理由もなしに聴いてみたくなりました。で、即聴いてみました。で、即これを書いてます。
一曲目、バンド名にしてアルバム表題曲でのいきなりのアンディーの歌声にウガッ。キャー、アンディー、素敵〜、L・O・V・E・ウイ・ラヴ・ア・ン・ディーッ!!
と80年代アイドルの親衛隊のように鉢巻きまいて声援したくなりました。キャピッ。っつーか、壊れすぎですか?
さて−急に冷静になりますが−ビートニク・ビーチはもともとはクリス・ケトナーという人がリーダーのグループでして、そこにアンディーが加わり、クリス(ベース)、アンディー(ドラムス)、ジョージ・コール(ギター)というラインナップで86年に"At
The Zula Pool"というアルバムをインディーから発売してます。
で、その後晴れてアトランティックとの契約相成り、このアルバムからロジャー・マニングもキーボーディストとして加入しています。アンディーとロジャーは元々幼馴染み、加入は自然の成り行きだったのでしょう。
ということで、当時全然売れなかったこのアルバムも「あのジェリーフィッシュのアンディー&ロジャーの幻のアルバム」っつーことで今ではかなり入手困難なようです。
まずこのアルバム、中身云々の話の前に結構ややこしい経緯の部分があるのでそのことから。
先に書いたようにビートニク・ビーチのデビュー・アルバムはインディー発売だった"At The Zula Pool"なわけですが、実はこのアルバムにはそこから再収録された曲がいくつか。具体的には[1][2][4][5][9][10]がそうです。まあ、アメリカのインディー系バンドにありがちなパターンですな。故にロジャーが参加しているのは、このアルバム用に新たに録音された[3][6][7][8]ということになります。
もう一つ。よくよく曲目を見ると[9][10]はななななんと日本でのみ発売されたジェリーフィッシュ『ニュー・ミステイク&デモ・トラックス』に収録されている曲ではありませんかっ!
ってびっくりしているのは私だけでこれって周知の事実なんですかね? さらに最近知った事実としては、[9]と[10]のジェリーフィッシュ・デモ・バージョンというのは、リンゴの『タイム・テイクス・タイム』用に録られたものだそうです。まあ実際にはそれは採用されず、全く未発表だった"I
Don't Believe"が採用されたわけですが。
で、中身的にはとっても素敵☆。ほんとは「☆」じゃなくてハート・マークをつけたいところですが、文字コード的な問題でつけられません。
以前「ジェリーフィッシュをパワーポップにカテゴライズしているアメリカ人は、ジェリーフィッシュの本質を全く分かっちゃいないんでは」的なことを書いたことがありますが、このアルバムを踏まえた理解だと、なるほど、そう思っちゃったのも無理ないかなあという気もします。全体にパワーポップ臭が漂ってます。爽やかです。
ただ、"At The Zula Pool"は86年、このアルバムは88年の発表。いわゆるパワーポップのブームが来るより大分前の作品で、ある意味先見の銘があったのかもしれません。この路線で突き進んでも、もしかしたら成功を収めていたかもしれません。これに比べると『ベリーバトン』がいかに毒気に満ちてることか…。バンドを飛び出してアンディーとロジャーが、いかに思い切った転身を図ったかが分かりました。
さて、[1]からしていかすなあ。やっぱジェリーフィッシュだよ。アンディーが歌っただけで。サウンドがややキラキラし過ぎ且つ途中からクリス・ケトナーにボーカルが代わるのがナンだけど…、ミドルのアンディーのコーラスだけで許すっ!っていうか素敵っ!
クリスのベースの音色というのもなかなか渋くていいです。
[2][6][7]はアンディーによるアンディーのパワーポップという感じで、ん?、こういう音ってどっかで聴いたことあるなあ、と思ったら、メリーメイカーズの『バブルガン』の音でした。こうしてみると、『バブルガン』がいかにアンディー・スターマライズされた音か再認識させられますな。彼からしたらあの音は十年以上前からやっているものであって、お茶の子さいさいなんでしょうね。っていうか、「お茶の子さいさい」って久しぶりに聞く言葉ですか?
ともかくいかします。いかしまくりです。
[3][8]はクリス・ケトナーとアンディーがボーカルを取り合っている曲ですが、ミドル・テンポでちょっと影のあるメロディー、多用されるコーラス、微妙に凝った構成等、思いっきりジェリーフィッシュっぽい。ロジャーの参加も大きく作用したのかな?
[4]はアンディーのリード・ボーカルだが、うーん、爽やかなバラードやね。爽やかすぎ、ドラムにリバーブかかり過ぎ、っつー部分はあるけど、いい曲です。どのくらい爽やかかというと「宇宙漂流バイファム」のエンディングくらいの爽やか度です。
[5]はクリス・ケトナーがリード・ボーカルの曲で、なんか普通のギター系ロックですな。ちょっとジョーイ・モーランドのソロにも通ずるどうでも良さが漂っている気もしますが(笑)。
で、ジェリーフィッシュ・バージョンも存在する問題の[9][10]は、うーむ気持ちは分かるけどねえ、という感じの出来か。っていうか、こっちの方が思いっきり情感たっぷり気味でよりスロー・テンポのゴージャスっぽい作りなのですが、逆にシンプルに作られたジェリーフィッシュ・バージョンのセンスの良さが浮き彫りにされる感じ。決してトホホな出来ではないんだけど、比較される相手が悪かった感じ?
ただびっくりしたのは[10]のリード・ボーカルはクリス・ケトナー。この二人ってどういう基準でボーカルを分け合っていたのでしょうかね?
と、どうしてもジェリーフィッシュ絡み、特にアンディー・スターマー絡みでの紹介になってしまったが、このアルバム、それだけで紹介するのは本来失礼な程のクォリティーを持っている。重なっている部分は勿論多々あるにせよ、ジェリーフィッシュとはまた少し違った方向性のバンドだし、音である。そしてちゃんとその方向性で完結した世界を持っています。
アンディーもロジャーもビートニク・ビーチ時代を嫌っていて、あまり語りたがらないらしいですが、それは「思うとおり出来なかった」というだけのことであって(あくまでクリス・ケトナーのバンドですからね)、これはこれで優れた作品だと思います。まじで。
(うらわ) |