Album Review "B"#5
アルバム・レビュー"B"その5



The Beatles
"The Beatles at The Hollywood Bowl"
Produced by George Martin ('77)
All Songs except 1,3,7,8&13 Written by John Lennon/Paul McCartney
1 by B.Russell/P.Medley
3 by Larry Williams
7 by Chuck Berry
8 by L.Dixon/W.Farrell
13 by Johnson/Penniman/Blackwell

1.Twist And Shout
2.She's A Woman
3.Dizzy Miss Lizzy
4.Ticket To Ride
(涙の乗車券)
5.Can't Buy Me Love
6.Things We Said Today
(今日の誓い)
7.Roll Over Beethoven

8.Boys
9.A Hard Day's Night
10.Help
11.All My Loving
12.She Loves You
13.Long Tall Sally

いわゆるレコード/CDその他フォーマットは何でもいいけど、アーティストが作ってレコード会社が配信する音楽は、当然、市場原理がほとんど働かない。レコード会社が何をリリースするのかしないのかを決め、値段はいくらにするのかも決める。ある意味、一人のアーティスト・一つの作品それぞれに完全独占市場が成立してるわけで、リスナーは基本的にそれに従うしかない。
まあ、いわゆるポップ・ミュージックが「創造的作品」と「工業製品」の中間物として成立するために過去数十年の試行錯誤の末、現在の形が出来上がったわけで、仕方が無いというか、それなりに理にかなった形態ではある。

「価格面」で市場原理が働く数少ない場面の一つは、国内盤/輸入盤の値段差だろうか。それが証拠に、日本人アーティストのCDの多くは、洋楽ものより数百円高くて当たり前という感じで未だ売られている。

もう一つ、「何をリリースをするか、しないのか」という面で市場原理らしきものが働くのは正規盤/海賊盤の戦いでしょうか。
もともと僕は海賊盤というものに否定的というか、生理的に好きではないところがある。これは主にアーティスト側の気持ちを想像してのことで、「出す気がないものを出される」のは嫌だろうな、という位のことです。
一方レコード会社からしてみたらそんな呑気なことは言ってられないわけで、おぜぜを稼ぐせっかくの機会をみすみす逃すことになる(時には海賊盤のせいで、初めてそういう市場の存在に気づくこともあるでしょうね)。で、「海賊盤キラーの正規盤」を出すことになる。

私の思いつくビートルズがらみの「海賊盤キラー」で代表はつぎのようなもになるだろうか。

・数多くの海賊ライヴ盤対策として出された本盤『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!(アット・ハリウッド・ボウル)』。
・BBC音源海賊盤対策の『ザ・ビートルズ・ライヴ!!アット・ザ・BBC』。
・『ウルトラ・レア・トラックス』や『アンサーパスド・マスターズ』シリーズ、『ゲットバック』音源、『セッションズ』音源、『デッカ』音源(これは海賊盤ではなく一応正規盤としても流通したが)、これらを纏めて退治するために作られた『アンソロジー』3部作。
・『ロスト・レノン・テープス』シリーズ対策の『ジョン・レノン・アンソロジー』。
ポールは「どうせ海賊盤とし出ちゃうから」ということで「公式海賊盤」として『アンプラグド』を出しましたが、既存のブートを退治することにはあまり熱心ではないようですね。退治するために色々出していただきたい。

さて、本作『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!(アット・ハリウッド・ボウル)』だが、77年という非常に中途半端な時期にリリースされたことからも海賊盤対策なのは明らかだけど、さすがに正規盤、素晴らしい内容だ。

まず、本作のプロデュース/リマスターを担当したジョージ・マーティンのお話から。
ジョージ・マーティンは当初、ビートルズのデビュー・アルバムにキャバーン録音でのライヴ・アルバムを考えていたいうのは有名だが、十分な音質クオリティーを得られないと分かるとあっさりその考えを捨て、「準スタジオ・ライヴ・レコーディング」という考え方で『プリーズ・プリーズ・ミー』を製作したのも有名な話だ。
このエピソードは二つのことを物語っていると思うのですよ。まず、ジョージ・マーティンは、初期ビートルズの持ち味はライヴでこそ発揮されると考えていたということ。もう一つは彼の一貫した音質へのこだわり。(後で書くが、これは20年後にも響いているような…)

マーティン氏自身のライナーによると、64年8月のビートルズ・ハリウッド・ボウル公演のライヴ録音が企画された時点で、彼はあまり乗り気ではなかったそうだ。理由は先に挙げた音質面での問題。翌65年8月公演も同様に録音を試みているが、満足な結果を得れず、お蔵となっている。

それが77年、先に挙げたような理由で、米キャピトル主導でリリースされるにあたって、結局ジョージ・マーティンはリマスターを引き受けている(エンジニアはジェフ・エメリック)。多分、さぞ、嫌だったろうと思う。過去の自分の失敗作(?)をもう一回手掛けなくてはならなかったのだから。
しかし、それ以上に「初期ビートルズのライヴでの魅力」に抗うことが出来なかったのだろう。確かにキャーキャー黄色い声援も凄まじいが、演奏はもっと凄いのですよ。

[6][7][8][11][12][13]が64年8月23日公演からのテイク、残りの[1][2][3][4][5][9][10]が65年8月30日公演からとのこと。
モニター用スピーカーもなく、ビートルズ自身、自分達の演奏をよく聞こえない状況下だったそうだが、いいのだよなこれが、奇跡のように。
奇しくも同じ77年にリリースされた(というか世に流出した)62年のスター・クラブでの演奏が、若さに任せた走りまくガナリまくりのパンキッシュなものだったのに比べ、この頃のビートルズはちょっと不思議なくらい演奏がどっしりしている。
ライヴというのはどうしても走りがち(早いピッチになりがち)になるものだが(例:ジョージ・ハリスン日本公演)、スタジオ録音に比べてもややゆっくり目なのではないか?と思うくらいどっしり落ち着いた風格ある演奏である。リンゴのドラム、ジョージのギターの安定感、各ボーカル/コーラスの丁寧さが特に印象的。ジョンもポールも声の調子はバッチシだったようだ。

それが翌66年くらいになると「どーせ客はおれ達の演奏なんて聴いてねーし」的な結構いい加減なものになってしまうわけで、このアルバムはライヴ・バンドとしてのビートルズの一番いい頃を見事に切り取っている。

まず、選曲に文句はなし。二つの公演を合成した「仮想的な」ライヴだが、メドレー的オープニング[1][2]、各ヒット曲の配置、ジョージ、リンゴの見せ場もきちんとあるし、当然締めは[13]である。やっぱ「アイム・ダウン」じゃだめでしょう、締めは。

細かいお気に入りを書くとまず、[3]のジョンのボーカルが最高。丁寧でいてハラワタ搾り出しボーカルであり、正規バージョンよりこちらの方が僕は断然好き。
MCなしで突然イントロがはじまる[7]はやはりこのシャッフル・ニュアンスが最高であり、例のブレークが絶対必要であり(ブレークが終わった瞬間呼応してでかくなる歓声も最高)、ポールの煽るようなコーラスもイカスわけです。
はっきり言って初期の定番曲[5][9][10][11][12]辺りが素晴らしいのは当たり前なのであり…

ってここまで書いていておいてなんですが、やっぱりビートルズは圧倒的であり、とにかく誰が聴いたって、こりゃいいに決まってるので、以下略。というか、こんなページをやっていてなんですが、ビートルズそのものを語るのは割りと苦手だったりします。

ですが、一つ言い残したことが。なんでこれって、CD化されないの? まあ、出された時の事情はともかく、これは77年にリリースされたものであり、つまりジョンの生前に出されたわけで、(おそらく)四人のゴー・サインをもらったアルバムのはず。テイク違いの音源を除いて、ジョン生前に一度出されながら未だCD化されていないのはこれだけである。納得行かないのである。『イエロー・サブマリン』リミックスしてる場合じゃない。

本来、87年から始まったオリジナル・アルバムCD化事業のどっかのタイミングでリリースされるべきだったと思うのだが。
これは全く完全に想像だが(妄想かもしれない)、CD化事業の途中から大きな発言権を持ったジョージ・マーティンの意向だったりして…。「やっぱ音悪いからやだ」みたいな。
『アンソロジー』シリーズがライヴ音源にもある程度落とし前をつけてくれるのかと思いきや、シェア・スタジアムを一曲、武道館を二曲収録しただけで、あとは音質重視のせいか、ラジオ・テレビのスタジオ・ライヴばかりである。なんか、ここでもジョージ・マーティニズムが生きているような…。

でも、もう一度言いたい! やっぱこのアルバムは一度出しちゃったんだし、CD化すべき! 今は中古レコードで安価で(多分定価よりも安く)手に入るけど、そのうち入手困難で泣く、みたいな状況になるかも!
まあ、その時はまた海賊盤がガッと出て、またぞろキラー正規盤が出たりするのかもしれないけど…。(うらわ)

Amazon.co.jp アソシエイト
AmazonBeatlesを検索
This Item may be ... On First Round



The Beatles
"Live! at The Star-Club in Hamburg, Germany;1962"
Produced by Adrian Barber??? :-) ('85)
2 Written by Joe Thomas/Howard Biggs
3&22 by John Lennon/Paul McCartney
4,6,20&29 by Chuck Berry
5 by Chan Romero
7 by Kay Twomey/Fred Wise/Ben Weisman
8 by Benson/Fisher
9 by Medley/Russell
10 by Johnson
11 by Bobby Scott/Ric Marlow
12 by Velazquez/Skylar
13 by King Curtis
14 by Leiber/Stoller/Penniman
15 by Barry Mann/ Cynthia Weil
16 by F.Smith/C.Goldsmith
17 by Meredith Wilson
18 by C.Colacrai/E.Fontaine
/D.Lampert/J.Cleveland
19 P.Specter
21 by Lerner/Hollander
23 by G.Vincent/Tex Davis
24 by Ray Charles
25 by Tommy Roe
26 by J.Kennedy/W.Grosz
27&28 by Carl Parkins
30 by Joe South/Billy Land
31 by Johnson/Penniman/Blackwell
32 by J.Mercer/V.Schertzinger

1.Introduction
2.I'm Gonna Sit Right And Cry (Over You)
(座って泣きたい)
3.I Saw Her Standing There
4.Roll Over Beethoven
5.Hippy Hippy Shake
6.Sweet Little Sixteen
7.Lend Me Your Comb
8.Your Feets Too Big

9.Twist And Shout
10.Mr.Moonlight
11.A Taste Of Honey
(密の味)
12.Besame Mucho
13.Reminiscing
14.Kansas City/Hey Hey Hey
15.Where Have You Been All My Life
16.Hully Gully

17.Till There Was You
18.Nothin' Shakin' (But The Leaves On The Tree)
19.To Know Her Is To Love Her
(会ったとたんに一目ぼれ)
20.Little Queenie
21.Falling In Love Again
22.Ask Me Why
23.Be-Bop-A-Lula
24.Hallelujah I Love Her

25.Sheila
26.Red Sails In The Sunset
(夕陽に赤い帆)
27.Everybody's Trying To Be My Baby
(みんないい娘)
28.Matchbox
29.I'm Talking About You
30.Shimmy Shake
31.Long Tall Sally
(のっぽのサリー)
32.I Remember You

現在CDショップに行って、「ビートルズ」の仕切りを見れば、大抵東芝EMI謹製のオリジナル盤がずらりと並び、場合によってはソロが数枚、カバー集が数枚、時にはインタビューCDが置かれている、なんていうのが一般的でしょうか。

しかし、そんなに大昔ではないLP時代(もう大昔?)、ビートルズの仕切りには初心者を悩ます謎のアルバムがたくさん置いてあった。多くはテイチク謹製の謎なネーミングをされた謎な内容の謎なアルバム達である。
オリジナル・アルバムを一通り聴いた人間は当然これらに興味を持つわけで、帯の「未発表曲収録」とか「世界初登場」とかいう言葉に踊らされ、あるいはきれいなピクチャー・ディスク仕様に惹かれ、買っちゃうわけです。そして、「なに…これ…?」な思いをするわけです。

私の場合ビートルズ好きの姉がいたものですから、一通り「なに…これ…?」なアルバムは彼女が買っておいてくれたわけで、実体験としてはそれ程つらい思いはしてないのですが。

でも、そんなテイチク盤の中にも「準定盤」ともいえるものが何枚かはあるわけで、「レア・ライヴ '62(完全盤)」という名で発売されていた2枚組の本LPはその一つかも。いわゆるスター・クラブ音源がまとめて聴けるというかなり便利な代物。おまけとして、同音源の「ツイスト・アンド・シャウト」と「フォーリング・イン・ラヴ・アゲイン」のカップリング・シングルまで付いてます(笑)。

「スター・クラブ音源」について一応触れておくと、ビートルズが「ラブ・ミー・ドゥー」発売後の62年12月に5度目のハンブルグ巡業をしたおり、スター・クラブでの演奏をテープで収めたもの。勿論ライン録音でもなんでもない、ヘボヘボな音質なものであり、別にライブ・アルバムを意図したものでもないので、演奏ミスなどもありまくり。

それが77年にドイツのベラフォンからリリースされ、ビートルズ・サイドからの起訴等にもかかわらず、手をかえ品を換え、世界各地で発売された。いわゆる海賊盤ではないが、それに近い音源である。
最近またWalters Recordsという海外レーベルでCD化されたが、収録時間のせいか24曲入りとなっている(おいしい曲は大体はいっているようだけど)。

さて、内容だが、まず先程述べたように、あまりにヘボな音質に度肝抜かれる。しかし、その中で始まる[2]のかっこ良さ! むっちゃ激しい。ボーカルも激しいが、特にリンゴのドラムのパンキッシュさはすごい。
以下私のお気に入り、または気になる所をつらつら書くと…。

[2]から[3]で音質が少し良くなる。この事からこの音源が一つのステージを連続的に録ったものではないことが想像される。
[4]のイントロでいきなりジョージがギターをミスる。彼からしたら若気の至りミスを全世界的に聴かれてしまうのでいい迷惑だろうが、とってもプリチー。それはさて置き、「ロール・オーバー…」はこの音源に限らずライヴ・バージョンの方が絶対いいと思う。あののっぺりしたエイト・ビート・ニュアンスにしてしまったオリジナル録音とは雲泥のノリである。
そして、[5]! 低音弦のグリスから入るこのテイクは超々々かっこいい。音質のヘボさを超えて、BBCライブ・バージョンの256倍はかっこいいと思われる。
[8]は何となく冗談ソングっぽいニュアンスがあって、ウィングス時代にポールが適当に作った曲を連想しなくもない。こういうのがルーツか?

[10]は当然最初の「ミスタ〜」という絶叫の入らないアップ・テンポのライブ・バージョン。
[13]はバディー・ホリーのカバー。ライナーによると発売は62年の9月とのことなので、時のヒット曲のカバーということになる。ジョージの裏返りボイスはバディー・ホリー風と言っていいのかどうか、意見の分かれるところだろう(笑)。
[15]はジョンのお気に入り、アーサー・アレキサンダーのカバー。
[16]は本テイチク盤のウリで、帯に「本邦初公開!」と銘打たれた曲。ボーカルはドイツ人ウェイター、ホスト・オベールとのことだが、これってビートルズの演奏か? どうもギターにしてもドラムにしても違うとしか思えないのだが。中途半端にプロっぽい演奏だ。それにこの曲だけ音質が少しだけ良くて、ますます怪しい。集英社刊の「ビートルズ百科全書」を見たら「ビートルズによるものではない」と断言していたが、僕もそれに一票。

[20]はポールにしては非常に珍しいチャック・ベリーのカバー。唄い始める前の"Good evening sir, how are you?"という軽いMCがポール果汁100%である。若き日から全然変わってないのね、この人、と痛感させられる。ポール・ファンならこの一言を聴くためにこのアルバムを入手してもいいだろう(笑)。曲自体も、割りと静かな出だしから徐々に激しくなるメリハリのついたもので、珍しいパターン。僕のフェイバリットの一つです。
[22]はオリジナル曲だからということだろう、ジョンの丁寧なボーカルが印象的。きれいな声です。
[23][24]はまたもドイツ人ウェイター、ホスト・オベールが登場。しかも会場かなり盛り上がってるぞ(笑)。ところでお前誰なんだホスト・オベール。[16]と違い、この2曲のバック演奏はまず間違いなくビートルズでしょう。

LPでいうとD面にあたる[25]〜[32]はなかなか聴きどころが多い。
まず、ジョージの[25]はなんか情けなくて…好き(笑)。トミー・ローがオリジナルのバディー・ホリー風の曲なのだけれども、どうもこういう曲の担当はジョージだったようで。「レット・イット・ビー・セッション」でも、彼はラリー・ウィリアムスの「ショート・ファット・ファニー」とかチョロチョロっと唄ったりしていたが、どうも変則的な歌を好む傾向はあるようですね、一貫して。
[26]の「夕陽に赤い帆」って、考えみたらこの音源でしか聴けないんだっけ? 適度にロックン・ロール、適度にポップな好仕上がりです。ずっと後の「ソ連盤」のノリを思わせる。
[28]はリンゴには悪いけどジョンがボーカルのこのバージョンの方がやはりかっこいい。
そして本アルバム中、ジョン・ボーカル曲で僕が一番好きなのが[29]。曲の入り方といい、ボーカルといい、ブレークのリフといい、かっこ良過ぎて悶えてしまいそうである。後に公式に録音したりしなかったのが残念である(ジョンはビートルズ公式録音では明らかにチャック・ベリーを避けてますよね)。
[30]は割りと冷静なジョンのボーカルとポールのほとんど叫んでるだけのボーカルの対比が笑える。
そして、[31]に突入。こっちが心配になってしまうほどのテンションである。走る走る、叫ぶ叫ぶ、叩く叩く。(爆)っちゅう感じですか?
だが、連続して演奏している[32]で一転、ほのぼのしたボーカルに切り替わるのがいかにもポールらしいというか、ビートルズらしい。ビートルズってどっかこういう冷静さというか、バランス感覚がある。ジョンもいきなり「プオオ〜ン」とのどかにハーモニカ吹いてるし。ブレークしてからのステージでの、盛り上がっててもさっとお辞儀して帰る、アンコールはなし、という醒めた感覚に通じてるのかも。「仕事でやってます」という感じがとってもクール。(うらわ)

Amazon.co.jp アソシエイト
"1962 Live at Star Club In Hamburg"

AmazonBeatlesを検索
This Item may be ... On Second Round



The Beatles
"The Beatles Christmas Album"
Produced by George Martin/Kenny Everett? ('70)

All material collaged by FAB 4
A Part of 4 Written by Lennon/McCartney
5 by Lennon/McCartney
/Harrison/Starkey

1.The Beatles Christmas Record ('63)
2.Another Beatles Christmas Record ('64)
3.The Beatles Third Christmas Record ('65)
4.Pantomime: Everywhere It's Christmas ('66)
5.Christmas Time (Is Here Again) ('67)
6.Christmas 1968 (Happy Christmas) ('68)
7.Happy Christmas 1969 ('69)

アンソロジー・プロジェクトには非常に期待していただけに、漏れてしまってがっかりしてまったものが幾つかある。一番はポールの歌う「グッド・バイ」。なんであれが漏れてしまったのかよく分からない。もう一つはこの『クリスマス・レコード』。

ビートルズはファン・クラブ向けに、63年から69年まで毎年クリスマス用のソノ・シートを作っていた。それをまとめたのがこのアルバム。やはりファン・クラブ向けに70年〜72年に発売されていた。アップルから発売されていたわけで、つまりはここに納められているマテリアルは準公式なものなのです。「アンソロジー」に入らなかった理由はいくつか考えられるが、一つは様々なスタンダード・ナンバー(らしきもの)をちりばめているので、著作権的に問題があるだろうということ。
でも、多分、そのせいではないだろう。恐らく、「お馬鹿すぎる…」と判断されたのではないでしょうか。ほんと、クレイジーなのだ、かなり。

このアルバムの雰囲気に最も近いビートルズの楽曲は「ユー・ノー・マイ・ネーム」。でも、この無茶苦茶なコラージュ具合はそれを遙かに凌駕している。もっとも近い例は…多分ボンゾ・ドッグ・バンド。あるいはフランク・ザッパ。(逆に、このアルバムは聴いたことがあっても、ボンゾズやザッパを聴いたことのない人は彼らの雰囲気が分かるでしょう)
毎年律儀に作っていたのはファン・サービスだけでなく、彼ら自身確実に楽しんでいたのだと思う。

初期の63年のものは"Good King Wencelas"を軽く歌った後、ジョン、ポール、リンゴ、ジョージの順にファンへのメッセージ。結構真っ当か、な? いや、既に何となくヘン。ただしゃべってるだけなのだが、横からの茶々の入れ方とか、絶妙なんだよな。突然歌ってみたり。
一番のお気に入りの箇所はリンゴにみんなで無理矢理「歌え!歌え!」と歌わせといて、その後を受けたジョージが「ありがとう…リンゴ…。あとで電話するから(笑)」と言う部分。

64年も基本的に似た構成で、"Jingle Bells"からは入り(紙笛を吹いているのはリンゴだろうか)、ポール、ジョン、ジョージ、リンゴの順にファンにご挨拶。ジョンが「本を買ってくれてありがとう」と、自著にかなりこだわっていたことが分かって面白い。テレビ・ショーでも突如"Buy my book"とか落書きしたりしてましたものね。ポールが「ホントに自分で書いたの?」と茶々を入れると、「違う」と即座に答えてます。ジョンとポール、ほんと仲良さそうなんだよなあ。
最後は「ハッピー・クリスマス」とみんなで絶叫しながら、どっかに走り去っていって終了。

65年はなんと「イエスタデイ」をみんなで歌いながら始まる。『ラバー・ソウル』制作中の11月8日の収録で、みんなやや疲れ気味、そのせいで余計やけくそ気味、時に妙にハイ・テンションになったりしている。特にジョンの突然歌う変な声音は後の「ユー・ノー・マイ・ネーム」や、ボンゾズの『アンピールド』の雰囲気そっくりで笑う。

66年は「ストロベリー・フィールズ」の録音が一段落ついた11月25日に行われている。
"Everywhere It's Christmas"、"Orowanyna"のメドレー、途中奇妙な寸劇を挟み(特にジョンの一人芝居が何となくおかしい)、最後も"Everywhere It's Christmas"で終わるというグーン・ショー・ライクな結構凝った構成。みんな実に生き生き楽しそうにやっている。ポールからしたら、「こういうのを映画にしちゃったら楽しいかも」というのが『マジカル・ミステリー・ツアー』の原点ではないだろうか。

「クリスマス・レコード」の中で、もっとも完成度が高いのは、あの有名な未発表曲"Chrismas Time (Is Here Agaein)"をフューチャーしたこの67年のものではないでしょうか。66年のものの発展型という感じで、"Chrismas Time…"を上手く使いながら、様々な寸劇を展開している。SEの使い方なんかも凝っていて、ここまで来ると「寸劇」というより「コラージュ」という感じ。でも、全体の印象は、あくまでかなりばかばかしくて、楽しい。ただしスタジオでみんなで録音をしたのはこの年まで。クリスマス・レコードもバンドの歴史とほぼリンクしているのだ。

68年のものはメンバー各々が録音したものをディスク・ジョッキーのケニー・エヴァレットが編集したもの。「オブラディ・オブラダ」や「ヘルター・スケルター」も使っていて、これはまさにコラージュ。これはこれで結構面白いし、裏「ホワイト・アルバム」的な感じもする。途中ポールがアコギで歌う"Happy Christmas, Happy New Year"はいかにもこの時期の彼が(その場で)作りそうな美しい小品だ。最後はタイニー・ティムが裏声で「一人ぼっちのあいつ」を歌って終わり。

69年も例によって各自の持ち寄ったマテリアルをケニー・エヴァレットが編集したもの。最初はヨーコを加えた五人がお互いが「ハッピー・クリスマス」と言葉を交わしているようにも聞こえるが、考えてみるとこの時期(69年の暮れも押し迫る頃)にこんな場面があったとは思えないので、不思議。まさかトリック?もしくは68年の風景?
リンゴのやけくそ気味な歌から「ジ・エンド」に結ぶところなんか結構かっこいいし、途中ポールが歌う"This Is Wish You"は「グッド・バイ」を思わせる純度高めの名メロ。
でも、結局印象に残るのは、ひたすらイチャつくジョンとヨーコだけのような…。

と、7年にも及ぶアルバム全体の流れを振り返ると、「仲良さ気なチャーミングな四人」> 「全員で綿密なスタジオ・ワーク/コラージュ」> 「各自のマテリアルを持ち寄って一つの作品に」> 「とにかくいちゃつくジョンとヨーコ」と、ほぼバンドの歴史をそのまま反映していてる(笑)。

それでも、一枚のアルバムとしても聴くことが出来てしまうのだから面白い。おそらく一貫して流れているビートルズの「ストレンジな感覚/ユーモア」のせいなのだろうな。ボンゾズが裏ビートルズのように、ビートルズはやはり裏ボンゾズなんですね。(うらわ)

Amazon.co.jp アソシエイト
AmazonBeatlesを検索
This Item may be ... On Second Round


←BACK ABC順に戻る

ABC順に進む NEXT→


フロント・ページへアルバム・レビュー・インデックスへガラクタ箱入り口へ何らかの足跡(掲示板)ご意見・ご感想をください!